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サーキュラーエコノミーとは

サーキュラーエコノミーとは?背景からビジネスモデルまで基本を解説

国内外で注目が集まるサーキュラーエコノミー(循環型経済)。社会経済システムを変革するシステムとして位置づけられていますが、その全体像はどのようなものでしょうか。今回は、「サーキュラーエコノミーの基本」をその背景からビジネスモデルまで解説します。

*本シリーズでは、循環型経済のことを「サーキュラーエコノミー」あるいは「CE」と表現します。

サーキュラーエコノミーとは?

はじめに、「サーキュラーエコノミーとは?」について確認しましょう。

経済産業省は、サーキュラーエコノミーを「バリューチェーンのあらゆる段階で資源の効率的・循環的な利用を図りつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じ、付加価値の最大化を図る経済」としています。(出典:経済産業省「成長志向型の資源自律経済戦略 」)

また、環境省は「従来の3R(リデュース、リユース、リサイクル)の取組に加え、資源投入量・消費量を抑えつつ、ストックを有効活用しながら、サービス化等を通じて付加価値を生み出す経済活動である。」(出典:令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書(PDF版)と表現しています。

この2つの説明に共通する下記の4点は、サーキュラーエコノミーにおける重要なキーワードといえるでしょう。

・サプライチェーンのすべての段階で資源の価値を維持あるいは高めること
・ストックを有効活用すること
・付加価値の最大化を図ること
・経済あるいは経済活動であること

その結果、環境省の説明にあるように、新規資源投入量や消費量を抑えることにつなげていくことが重要です。

サーキュラーエコノミー移行が必要な背景

なぜサーキュラーエコノミーに移行する必要があるのでしょうか。私たちは、これまでの大量生産・大量消費型生産モデル(リニアエコノミー)が引き起こしてきた地球規模の環境危機の真っ只中にいます。この危機を示すデータは残念ながら多く存在します。

たとえば、世界の廃棄物量は、2020 年の 141.2 億トンから 2050 年には 320.4 億トンまで 増加することが見込まれています。(出典:株式会社廃棄物工学研究所 「世界の廃棄物発生量の推計と将来予測 2020 年改訂版 」さらに、パリ協定で世界の平均気温上昇を工業化以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をするという目標が合意されていますが、すでに2011年から2020年までの期間で工業化前と比較して1.09℃上回っていることがIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書で明らかになりました。(出典:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)「The Sixth Assessment Report(AR6) 」)

下記は、プラネタリーバウンダリー(地球の限界)を示しています。この概念は、ストックホルム・レジリエンス・センター所長のロックストローム氏らにより開発されたもので、「科学的に示された人類が安全に活動できる範囲」のことを指します。いわば「地球の容量」でもあります。9つの境界(気候変動、生物圏の一体性、土地利用の変化、淡水利用、窒素・リンの生物地球化学的循環、海洋酸性化、大気エアロゾルによる負荷、成層圏オゾン層の破壊、新規化学物質)に分類されていますが、2022年に報告されたプラネタリーバウンダリーの最新論文によると、このうち5つ「気候変動」「生物圏の一体性」「窒素・リンの生物地球化学的循環」「土地利用の変化」「新規化学物質」がオレンジ色、つまり限界あるいは安全域を超えているのです。

こういった背景から、現状のシステム全体を変えるモデルが探求されています。そこで、サーキュラーエコノミーは、負の環境影響と人間のウェルビーイング増大をデカップリング(分離)する「ツール」として注目が集まり始めています。

ストックホルム・レジリエンス・センター
参照元:【図】ストックホルム・レジリエンス・センター(出典:Planetary Boundary

3Rとの違い

いわゆる「環境問題」にはこれまでさまざまな対策が講じられてきました。その中心となってきたのが、3R(リデュース・リユース・リサイクル)です。では、この3Rとサーキュラーエコノミーは何が違うのでしょうか。主な3つのポイントを、狭義から広義の順番に紹介します。

・サーキュラーエコノミーは「廃棄物をなくす」ことを主な目的としている。つまり、「廃棄物」ではなく「資源」として価値を維持・循環させるか、設計段階から検討しそのための施策を打つ。3Rは、廃棄物が発生する前提での方策である

・サーキュラーエコノミーは、経済システムである。モノの作り方・使い方を循環型にすることで、モノの売り方(ビジネスモデルの変革)に加え、ルール(政策)・投資・消費行動といったシステム全体を変革することにつながる。3Rの対象の中心はモノである

・サーキュラーエコノミーは自然を再生することを目的の一つとする。特にバイオ循環(生物資源の循環システム)において、土壌再生や生物多様性再生などにもアプローチすることが、3Rとの違いである

サーキュラーエコノミーのシステム図
(エレン・マッカーサー財団のバタフライダイアグラム)

サーキュラーエコノミーの概要

サーキュラーエコノミーのシステム図
参照元:【図】エレン・マッカーサー財団のシステム図(出典:https://ellenmacarthurfoundation.org/circular-economy-diagram

上記は、サーキュラーエコノミーを推進する団体、エレン・マッカーサー財団によるサーキュラーエコノミーのシステム図、通称バタフライダイアグラムです。サーキュラーエコノミーを理解するにはこの図を頭に入れておくと良いでしょう。

右側(青)が「技術サイクル」と呼ばれ、鉄・プラスチック・化学物質などそのまま自然界に戻すと環境に悪影響を及ぼす枯渇性資源のサイクルを示しています。

左側(緑)は生物サイクルと呼ばれ、例えば木材・綿・食品など本来的には生分解する自然資源のサイクルを指します。

主なポイントは下記のとおりです。

・円の中で進むスピードを抑えることで、なるべく高い価値を保つ。つまり、長く利用する
・小さい円を優先的に採用する(例:「リサイクル」よりも、「維持・長寿命化」)ことで、高い環境価値を保つ
・右側(生物資源)と左側(枯渇性資源)に分けて設計する。両者の複合は、修理や再資源化を難しくする

循環型ビジネスモデルとは?

実際に企業が取り組む際には、バタフライダイアグラムに準じたビジネスモデルを採用する必要があります。

たとえば、製品の寿命が長くなることで企業の収益はどうなるでしょうか。再生材はどこから調達するのでしょうか。これらの課題のように、企業にとっては製品を循環型にするだけでは持続可能なビジネスが成り立たなくなる可能性があるかもしれません。加えて、消費者・投資家意識、政策がサーキュラーエコノミー移行へ向かっているという現状があります。

そこで、現状のビジネスモデルを採用しつづけるかも含めて、循環型製品に見合ったビジネスモデル導入を検討する必要があるのです。以下では、OECDやアクセンチュアなどが提唱している循環型ビジネスモデルを紹介します。

1.循環型供給
バージン材(新品材料)から再生可能資源・再生材への移行を図る。そのための物流や回収システムも確立することで中長期的な資源の安定供給・コスト削減を図る。例)再生プラスチックから作られた各種製品、非可食バイオマスプラスチックからできた製品

2.資源回収
廃棄予定の製品を回収、再利用やリサイクルすることで生産・廃棄コストを削減する。例)オフィス家具の再利用、プラスチックを回収し水平リサイクル

3.製品寿命延長
製品の長寿命化・メンテナンス・修理・再販により、製品形態を保ったまま価値を維持する 例)保証期間が長い衣服の設計、メーカーによる修理サービスや再販

4.シェアリングエコノミー
遊休資産を共有し、有効活用することで、資産あたりのキャッシュポイントを増やし、資源利用効率を高める 例)スペースシェア、中古車シェア

5.製品サービス化(PaaS)モデル
製品を所有せず利用に応じて料金を支払う。製品の所有権を事業者側に維持させることで、製品長寿命化へのインセンティブを働かせる。例)電球のサブスク、子ども用自転車のサブスク

上記はあくまでも例です。その他にもサーキュラーエコノミーを支えるプラットフォームビジネス、修理と物流を組み合わせたサービスなど、さまざまなモデルが存在します。重要な点は、これらを一つのみ採用するのではなく、下図のようにサプライチェーン全体で循環型ビジネスモデルを採用することにより、循環性(サーキュラリティ)が高まるということです。

循環型ビジネスモデル

サーキュラーエコノミーのシステム図
参照元:【図】Sitra “SUSTAINABLE GROWTH WITH CIRCULAR ECONOMY BUSINESS MODELS

サーキュラーエコノミーの可能性と国内動向

サーキュラーエコノミー関連市場については、グローバル規模では2030年までに4.5兆ドルの経済価値が生まれることが予測され(出典:アクセンチュア株式会社「無駄を富に変える:サーキュラー・エコノミーで競争優位性を確立する 」)、国内では、2030年までにCE関連ビジネスの市場規模を現状の1.6倍となる80兆円以上へ成長させることが政府目標となっています。(出典:成長戦略フォローアップ工程表 (内閣官房、令和3年6月18日)

そこで、サーキュラーエコノミーを軸に据えた政策を立案する動きは各国や自治体で起こっています。日本でも、「循環経済ビジョン2020」(2020年5月22日公表)やそれに続く「成長志向型の資源自律経済戦略」(2023年3月31日公表)、民間でも経団連が「サーキュラー・エコノミーの実現に向けた提言」(2023年2月14日公表)など、産官学民で動きが加速しています。

社会のシステムを変革するサーキュラーエコノミー

モノを循環型にすることにより社会のシステム全体を変革する、その結果として自然にポジティブなインパクトをもたらそう、という意図を持ったシステムがサーキュラーエコノミーだということがわかりました。その対象は特定の業界に絞られるということではなく、すべての産業が対象になってくると言っても過言ではありません。これから取り組む企業は、サーキュラーエコノミーの本質を理解し身につけたうえで、自社にできることは何かを検討してみるところからスタートすると良いでしょう。

もう少し詳しく知りたい場合はこちらをご参照ください。

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