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サーキュラーシティとは

サーキュラーシティとは?〜サーキュラーエコノミーの概念をまちづくりに取り入れた新しいまちのカタチ〜

こちらの記事では「サーキュラーエコノミーの基本」について解説しましたが、この概念をまちづくり・都市政策に取り入れた「サーキュラーシティ」の動きが国内外で広がっています。サーキュラーシティは、環境や経済へのアプローチもさることながら、住民のウェルビーイングも高める概念・取り組みとして、その存在感が高まっています。

サーキュラーシティとは?

サーキュラーシティの定義は1つに定まっていません。しかし、サーキュラーエコノミーの概念や戦略を取り入れた「循環型」まちづくりのあり方を指しています。さまざまな団体や自治体、学者を中心として定義を示す中、その中でもサーキュラーエコノミーの重要な要素を取り入れながら言語化した、「欧州サーキュラーシティ宣言」(Circular Cities Declaration)の定義をご紹介します。

「サーキュラーシティは、市民・企業・研究団体と共同で、すべての都市機能において包括的にリニアエコノミーからサーキュラーエコノミーへ移行することを推進する都市である。製品・部品・資源・栄養素の価値と有用性をなるべく長く維持し、資源ループを閉じ、有害な資源利用と廃棄物発生を抑止することで、資源利用と経済活動を切り離す(デカップル)するビジネスモデルと経済行動を促進する。サーキュラーシティはSDGsに沿って、人間のウェルビーイングを高め、GHG排出を抑え、生物多様性を保護・回復させ、社会的公正性を高めることを模索する。」(出典:Circular Cities Declaration

ほかにもエレン・マッカーサー財団やUNECE(国際連合欧州経済委員会)、EIB(欧州投資銀行)、この領域の研究者らから提起された定義がありますが、概ね共通している要素は下記だといえます。

・サーキュラーエコノミーの概念をまちづくりに取り入れる
・資源や製品を循環型にすることで、まちで資源利用と経済活動を切り離す
・すべての政策はサーキュラーエコノミーがベースとなり、企業のビジネルモデルを変革し、住民の消費行動を変革する

結果として、下記などが実現できるとしています。
・環境課題(温室効果ガス排出や有害物質、生物多様性損失の防止など)にアプローチ、環境再生(リジェネレーション)にも取り組む
・また、社会面(住民の都市に対する満足度、住民同士のつながり創出、環境改善、健康増進など)における住民のウェルビーイング向上
・まち全体が(経済・環境・社会において)繁栄する

サーキュラーシティが注目される背景とは?

サーキュラーシティが注目される背景として、まず最初にサーキュラーエコノミーの注目度の高まりと取り組みの進化が挙げられます。サーキュラーエコノミーは主に企業や業界単位で認知され始め、取り組みが進められています。そこで、この概念をまちづくり・都市政策に生かすことができると考えられるようになったともいえます。そもそも社会システムを変革するという目的を持ったサーキュラーエコノミーは、まちづくりとも親和性が高いのです。

さらに背景を探ると、やはり都市が引き起こす環境・社会課題が大きいといえます。世界の55%の人口は都市に集中し、温室効果ガスの7割、廃棄物の5割を排出するなど、さまざまな環境課題を抱えています。

下図では、いわゆるリニア型(直線型)都市(リニアエコノミーについては前回の記事を参照)における「無駄」と「外部不経済」の例が描かれています。ちなみに、外部不経済とは、市場における経済活動によって起こる環境汚染の対策に要する費用を内部コストとして取り込んでいない経済のことを指します。

リニア型都市における「無駄」と「外部不経済」の例
リニア型都市における「無駄」と「外部不経済」の例
出典:The 15 circular steps for cities(EIB)
https://www.eib.org/attachments/thematic/circular_economy_15_steps_for_cities_en.pdf

こういった中、サーキュラーエコノミーを政策として取り入れ、たとえば廃棄物を有効な資源として活用していくことで、「消費地」としての都市をある意味「生産地」に変えていくこともできるのです。

一方で、中小規模のまち・都市や中山間地域などでは、「消費地」という側面よりも「地域資源の最大活用」という視点が重要視されるでしょう。ここでも、たとえば森林資源の活用など、サーキュラーエコノミーの原則を活用することができます。

下の図は、都市が持つサーキュラーエコノミー移行の可能性を表しています。サーキュラーシティへ移行するというビジョンを掲げ、住民も含めたステークホルダーを集め、パートナーシップと循環型調達などの政策などと組み合わせることで、環境・社会・経済において「繁栄する」まち・都市づくりへの道筋を描くことも可能です。

サーキュラーシティの事例:アムステルダム

アムステルダムの風景

オランダ・アムステルダムは、サーキュラーシティの事例としてよく知られています。同市は2050年までにサーキュラーシティへ移行することを2016年に宣言しました。そのマイルストーンとして、2025年までに家庭から出るごみをリサイクル・再利用するため65%の分別率を実現することや、2030年までにバージン資源の使用を50%削減する目標を定めています。

サーキュラーエコノミーの優先順位に沿って循環型施策が採用されるとともに、3つの重点分野「食品と有機廃棄物」「消費財」「建築」が定められました。たとえば「食品と有機廃棄物」では、フードバリューチェーンを短くするために都市農業を推進することや食品ロス削減、「消費財」においてはシェアリングや修理の促進、公共調達の削減など、「建築」では循環型建築基準の適用などの具体的施策が講じられています。下図のように、各重点分野の大目標のもとに具体的政策が紐づいているという体系化された構図となっています。

Amsterdam Circular 2020-2025 Strategy
【出典】Amsterdam Circular 2020-2025 Strategy (P27)

さらに、同市は2022年2月、こういった施策の効果を検証するツールとして、Amsterdam Circular Monitorというモニタリングフレームワークを公表。サーキュラーシティへの移行がどの程度進んだか、という評価をすることも重要視されています。

サーキュラーシティに向けて重要なこと

まちづくり・都市政策にサーキュラーエコノミーの概念を導入するにあたり重要な点がいくつか挙げられています。ここでは、このうちの4つを取り上げます。

1.ロードマップと重点分野、取り組みの拠り所となるフレームワーク、成功の定義の策定
サーキュラーシティを目指すにあたり、指針となるロードマップと重点分野、取り組みの拠り所となるフレームワーク、成功の定義を示す測定方法を定めることが期待されます。サーキュラーシティに軸足を置く自治体の多くはこれらを定めています。地域の実情に応じてどの分野に重点的に取り組んでいくかを決定、選定した重点分野にサーキュラーエコノミーの概念を適用することで、新たな施策やアイデア、パートナーシップが生まれてくるでしょう。

2.ステークホルダーを巻き込む
サーキュラーシティへの取り組みに限ったことではありませんが、パートナーシップが重要となるサーキュラーエコノミーにおいては特にこの点は重要です。自治体は連携を生み出すことに一定の役割を果たせるでしょう。

3.サプライチェーン全体で取り組む
これまでごみ減量政策などの廃棄物管理政策や3Rは、どの自治体でも取り組まれています。サーキュラーエコノミーにおいては、前回の記事でも確認した通り、「廃棄物がでないようにどう設計するか?」あるいは「廃棄物を資源として変換する」ことがキーワードとなってきます。たとえば、食品ロスを削減したうえでそれでも出る有機廃棄物を有効活用することや、公共建築における耐久性・メンテナンス性の高い建築物を設計する基準を設けるなど、サプライチェーンのいわゆる下流における取り組みだけではなく、上流を含めた全体を視野に入れると、コスト削減または地域内事業の新たな創出にもつながる可能性があります。

4.地域のウェルビーイングを大切に
何といっても、サーキュラーシティ移行により住民がウェルビーイングを高められるかが大きなポイントとなります。サーキュラーエコノミーにより住民の生活が豊かになり、住民同士のつながりが生まれるように設計するなど、ウェルビーイングという視点を最大限意識することが重要です。また、一方で、たとえば消費抑制を過度に強制することや、急速に厳格な規制を敷くことなど、サーキュラーシティ移行に向けた施策が住民のウェルビーイング増進に逆行しないように注意をする必要もあるでしょう。

終わりに:企業としては?
サーキュラーシティへの推進主体は行政だけではありません。サーキュラーエコノミーはあらゆるステークホルダー対象となり、特に企業の役割は重要です。環境関連のソリューションを持つ企業のみならず、地域でのあらゆる企業にとっては、サーキュラーエコノミーに移行する機会となったり、自治体に働きかけたり、あるいはサーキュラーエコノミーを接着剤として地域内企業や自治体自体と連携したりすることが可能となります。この点は企業にとっても大きなビジネスチャンスともなるでしょう。

終わりに:企業としては?

サーキュラーシティへの推進主体は行政だけではありません。サーキュラーエコノミーはあらゆるステークホルダー対象となり、特に企業の役割は重要です。環境関連のソリューションを持つ企業のみならず、地域でのあらゆる企業にとっては、サーキュラーエコノミーに移行する機会となったり、自治体に働きかけたり、あるいはサーキュラーエコノミーを接着剤として地域内企業や自治体自体と連携したりすることが可能となります。この点は企業にとっても大きなビジネスチャンスともなるでしょう。

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