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【サーキュラーエコノミー視察先例】ゼロ・ウェイストのまち・上勝町で、企業のサーキュラーエコノミー移行に向けたヒントを得る

徳島県上勝町
視察OK

2023.8.25

【サーキュラーエコノミー視察先例】ゼロ・ウェイストのまち・上勝町で、企業のサーキュラーエコノミー移行に向けたヒントを得る

WHAT:何が学べる?

ゼロ・ウェイストの町として知られ、リサイクル率約80%を達成した徳島県上勝町。人口約1,400名のこの町には国内外から企業や自治体関係者、個人の視察者が訪れます。多い年には、年間4,500名の視察者数を記録したこともあるそうです。

企業にとっては、以下のような目的で視察することができます。

●ゼロ・ウェイストを学び、企業のサステナビリティ・サーキュラーエコノミー戦略へのヒントを得る
●ゼロ・ウェイストを体感することで、企業の循環型設計戦略へ活かす
●持続可能な地域資源を活用した商品設計へのヒントを得る
●SDGs未来都市に選定された上勝町のSDGs施策について学ぶ
●サーキュラーエコノミーを軸とした官民連携のあり方を模索する
●分別をする住民に直接ヒアリングし、商品設計やマーケティングに活かす

WHY:なぜ上勝町なのか?

サステナビリティ・サーキュラーエコノミーに課題を持つ企業にとって最適な場所

町の最上位計画である「第4次上勝町活性化振興計画」でも記載されていますが、同町は現在、ゼロ・ウェイストから次のステージへ進むため、重要なパートナーである企業との連携を模索中。「学び」だけではなく、実際の事業化を見据えた視察にも適しています。

今回CO-MIT取材班をご案内いただいた上勝町ゼロ・ウェイスト推進員の藤井園苗さんによると、観光ではなくゼロ・ウェイストをより深く学びたい視察者が増えているのがここ最近の状況だとか。サステナビリティ・サーキュラーエコノミーを上勝町の活動を通じて考える最適な場と言っても過言ではないでしょう。視察をご希望の方は下記お問い合わせよりご連絡ください。

上勝町の歴史

上勝町は2003年、日本で初めてゼロ・ウェイスト宣言を行い、2016年にはリサイクル率80%を達成。
2021年の数字は79.9%、同年の全国平均は19.9%ですから、この数字がいかに高いかがわかります。

しかし、ここに至るまでの道のりは決して平坦なものではありませんでした。
ここで簡単に上勝町のゼロウェイストの歴史をご紹介します。(詳細は上勝町HPのこちら

1975年頃から、現在のゼロ・ウェイストステーションに位置する日比ヶ谷で自然発生的に野焼きが行われるようになりました。
その後20年にわたりこの状態が続き、大気汚染などの環境問題が顕在化しましたが、少しでもごみの量を減らそうと、コンポスターの補助金制度の構築や9分別の開始などリサイクルに向けた取り組みが始まります。

町は1998年に2基の小型焼却炉を導入したのですが、小型焼却炉への廃棄物投入量を減らすため、25分別まで分別数を増やしました。しかし、ダイオキシン規制強化を受けて、2基の焼却炉のうち1基はダイオキシン排出量を測定したところ、不適正という結果が出ました。そこで、2000年当時の町長は焼却炉で燃やすのではなく廃棄物減量化のためリサイクルをするという決断を行い、2001年4月から35分別が始まったのです。

2003年にはアメリカでゼロ・ウェイストを提唱したポール・コネット博士が来町し、ゼロウェイストへ舵を切ることになります。
同年、上勝町はついに全国で初めてゼロ・ウェイスト宣言を行い、冒頭述べたリサイクル率を達成することになります。

【参考】上勝町HP

その後、2020年には後述する新たな上勝町ゼロ・ウェイストセンターの開設や企業連携等、直近では新たな展開を模索しています。さらに、2020年12月、2030年に向けた新たなゼロ・ウェイスト宣言が議会で全会一致で可決され、町は次の一歩を歩み始めるに至りました。

上勝町は分別リサイクルを中心として、リユース等にも取り組んできましたが、消費側からの取り組みには限界があります。
リサイクル率80%という驚異的な数字を達成したものの、いわゆる「雑巾を絞りきった状態」であることが現在の上勝町の課題となっています。ここから先は、そもそもごみを出さないような設計、ごみという概念をなくす活動の推進、経済性を担保した上でそもそものモノの生産や消費の絶対量を減らす取り組み、つまりサーキュラーエコノミー型への転換が求められています。
これには住民だけの努力ではなく、さらに上流に位置する企業と連携して取り組む必要があるのです。
これが、「学び」だけではなく、より「実践的な視察・研修の場」としてご紹介する所以です。

主な視察先例

下記は主な視察先例です。

上勝町の取り組み全体像の説明(ゼロ・ウェイスト推進員)

写真:ゼロ・ウェイスト推進員 藤井園苗さん(一般社団法人ひだまり理事)による案内

上勝町ゼロ・ウェイストの全体像をゼロ・ウェイスト推進員より説明いただきます。リサイクル率80%を達成した秘訣は何か。
今後さらなるゼロ・ウェイストを加速していくために、企業としては何ができるかを考えるきっかけになるでしょう。「上勝町の取り組みからエッセンスをお持ち帰りいただけるものがあれば嬉しいです」と藤井さんは話します。

上勝町ゼロ・ウェイストセンター

上勝町ゼロ・ウェイストセンターは必ず訪れたい上勝町のランドマーク。
同センターは2020年4月、旧ゴミステーションがリニューアルする形で開設されました。上から見ると「?」の形をしていますが、現代の消費社会に対して疑問を投げかける意味があります。上勝町では原則ごみ収集車がなく*、住民自らが廃棄物を持ち込みこちらで分別をします。(*ただし、車が運転できないなど自分で持ち込む事ができない場合は、奇数月に1回戸別収集あり)月〜金7:30〜14:00 土日 7:30〜15:30の時間内であれば住民はいつでも廃棄物を持ち込むことができます。

写真:上勝町ゼロ・ウェイストセンター外観(提供:上勝町)

写真:センターの壁面。住民から廃棄された建具700枚を集め再利用。建具の寸法を一つひとつ測って設計していったそうです。
他にもメンテナンス・解体しやすい設計など見どころがたくさん。ぜひ実際に訪問して確認してみてください。

写真:上勝町ゼロ・ウェイストセンターの様子

写真:住民はここで分別。自分が出した廃棄物が何に生まれ変わり、町にお金がどの程度入ってくるか(出るか)が記載されています。

写真:「くるくるショップ」住民が不要となったがまだ使える品を自由に持ち込むことができ、使いたい人は自由に持ち帰ることができます。(持ち込みは住民のみ。持ち出しは誰でも可能)

ゼロ・ウェイストセンターに来たからには、同センター内にあるホテル「HOTEL WHY」に宿泊しておきたいところ。同ホテルでは、上勝町の暮らしを通じて、日々の暮らしについて見つめ直すヒントを得ることができます。石鹸やコーヒーやお茶は、フロントで滞在中に使う分だけ自分で取ります。朝食では、後述するRISE&WIN BREWING CO.が作ったオリジナルメニューを堪能。容器は当然リユース可能な容器で提供され、ごみが出ることはありません。もちろん、使い捨てアメニティの提供はありません。頭ではわかるゼロ・ウェイストのコンセプトを身をもって体感できる、そんな施設です。

写真:室内写真。柱は町内産ヒノキを使用。廃材を出さないように枝をそのまま使っています。

写真:ゼロ・ウェイストをコンセプトにした朝食

写真:HOTEL WHY スタッフによる「STUDY WHY」

宿泊者は、施設や上勝町の歴史を紹介するスタディツアー「STUDY WHY」に参加する事が可能(宿泊していない方も有料で参加可能)。見るべきポイントが多い同施設を余すところなく知ることができます。

写真:分別体験

翌日には分別体験を行います。45分別をするということはどういうことなのかが体感できるはずです。たとえば、コンタクトレンズの空ケースは、アルミを剥がして、アルミとプラスチックに分別しますが、アルミが剥がしにくいケースもあるそうです。こういった点は、企業がいかに分別・リサイクルしやすい「循環型設計」となっているか、住民・消費者の視点から体感することができます。

提供側からの視点でも、ゼロ・ウェイストやサーキュラーエコノミーの観点を盛り込んだ商品・サービス設計、ビジネスモデル構築などの多くのヒントを得ることができるでしょう。

KINOF

写真:KINOF 公式HPより

上勝町の杉の間伐材を繊維化し、タオルやスポンジにして販売。コロナ禍では土壌で分解するマスクとして商品化し注目されました。「地域資源活用の考え方とゼロ・ウェイストの掛け合わせで生まれたようなブランドです。循環型そのものを表しているのではないでしょうか」と藤井さん。地域資源の活用方法や、コンセプトとしてのゼロ・ウェイストをどう商品化するかなどが学べるでしょう。

Cafe polestar

写真:Cafe polestar 外観

写真:Cafe polester 内観

ゼロ・ウェイストがコンセプトのカフェ。上勝町の取り組みがこのカフェで体験できるようなショールームとしての役割も果たしています。上勝町で有名な「つまものビジネス」を展開するいろどりの商品を体感できたり、量り売りで商品を購入できたりと、ゼロ・ウェイストというコンセプトをサービス業でどのように具現化しているのかを学ぶことができます。polestarは上勝町で始まったゼロ・ウェイスト認証を取得しています。上勝町産の杉や断熱材、ペアガラスが使用されており、構造や持続可能なエネルギー利用などの観点でも参考になるでしょう。

RISE & WIN BREWING CO.

写真:RISE & WIN BREWING CO. 外観

上勝町が進めるゼロ・ウェイストに共感し、2015年に開業したマイクロブルワリー。建築設計は、後に上勝町ゼロ・ウェイストセンターの設計を担うことにもなる中村拓志&NAP建築設計事務所。上勝町産木材が使われ、町内で解体された民家の建具が再利用されています。

店内を入るとまず目に入るのが空ビンや欠けたコップなどを再利用してできたシャンデリア。圧倒的な存在感を放っています。他にも廃材をリメイクした棚やレンガの再利用、鹿の皮や古着をリメイクしたユニフォームなど「循環」にこだわっていることが特徴ですが、何と言ってもビール造りにおける循環の輪をできるだけ閉じていこうとしている点に大きな学びがあるでしょう。たとえば、醸造過程で出るモルトかすは多くのマイクロブルワリーの悩みの種となっていますが、これを液肥として再活用し、さらに最近開始した麦栽培の耕作地でその液肥を使い、それがビールになる、地域内で循環を閉じることへのチャレンジが始まっています。

写真:店長の池添亜希さん。上勝町の魅力を感じて移住してきたそうです。ビールを通じた循環ビジネスを体感できます。

このほか、上勝町を一躍有名にしたつまものの生産販売を手掛ける「いろどり」、量り売りを行う人気イタリアン料理店ペルトナーレなど、見どころが多くあります。

研修やワークショップができる施設は?

研修やワークショップ等ができる場所としては、上勝町の宿泊施設・月ヶ谷温泉「月の宿」の会議室やゼロ・ウェイストセンターのラーニングセンター&交流ホール上勝ベンチャーHUBステーションが最適です。もちろん気候が許せば外でアクティビティを行うのも良いでしょう。視察中や終了後すぐに気づきをアウトプットし、自社ビジネスへ活かし方について考える機会を持つ企業もあるそうです。

写真:月ヶ谷温泉 多目的ホール moon (c)かみかついっきゅう

写真:上勝町ゼロ・ウェイストセンター ラーニングセンター (c)Transit General Office Inc.

上勝町内外の交通手段は?

上勝町の公共交通手段は縮小しておりますが、下記のような公共交通手段があります。

徳島空港や上勝町へ:日本航空がスマートシャトルを運用しています。
徳島駅や徳島空港などから上勝町へ、または上勝町内の移動:上勝町では町民がボランティアで自身の車をタクシーとしてサービスを提供する、通称ボランティアタクシーという仕組みがあります(正式名称:自家用有償旅客運送」)発着地のどちらかが上勝町であれば、誰でも利用できます。この制度自体を視察する方もいるそうです。

上勝町視察者に向けたメッセージ

最後に藤井さんから視察者に向けて下記のメッセージをいただきました。
「人口減少が進むなど課題先進地と言われる上勝町ですが、企業の皆様には実証実験の場としても活用していただきたいと思います。企業が持っているノウハウで、上勝町の課題を一つずつ解決していければ嬉しい限りです。そこまで踏み込まなくてもまずは訪れていただき、上勝町の取り組みを知っていただければ光栄に思います」

上勝町の取り組みは、ゼロ・ウェイストやサーキュラーエコノミーの本質をつかみ取り、ビジネスに活かせるヒントが盛りだくさんです。視察に関心のある企業・団体は下記までお問い合わせください。

お問い合わせはこちら

那須 清和(なす きよかず)
サークルデザイン株式会社 代表取締役
大学卒業後、教育関連企業、経営⽀援団体を経て、サーキュラーエコノミーに特化した共創・コンサルティング・リサーチ・研修業務 などを⾏うサークルデザイン株式会社を2020年7⽉に設⽴。2004年に実施したエクアドルでのコミュニティ紛争のフィー ルドワークをきっかけに、環境再⽣と⼈間のウェルビーイング向上の同時追求に関⼼を抱き、後にサーキュラーエコノミーを追求・推進するようになる。 また、Circular Economy Hub 編集⻑(ハーチ株式会社運営)、⼀般社団法⼈⽇本サステナブルサロン協会理事、サステナブルジャパンプロジェクトタスクフォースメンバーなども務める。
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