人事担当者が知っておくべき「静かな退職」とは?「静かな退職」を防ぐために大事な人事部の役割について

2025.5.29

人事担当者が知っておくべき「静かな退職」とは?「静かな退職」を防ぐために大事な人事部の役割について

こんにちは。関西万博もスタートしましたが、皆様いきましたか?私はチケットを購入しているものの、まだ行けていない状況で夏前には行きたいと考えています。
私が担当している企業様では入社後3日で退職されました。本人曰く、「最初からデジタル化に遅れている業界で会社としても遅れていることは想定していましたが、これほどまでに遅れているとは思いませんでした、自分のキャリアを考えて早めに方向転換しようと思って退職を申し出ました」とのこと。
皆様もAI活用をはじめ、デジタル化は進めていかれた方が良いと感じた事象です。

さて今回は、最近聞くことが増えてきた「静かな退職」と、新卒社員の「静かな退職」を防ぐために大事な OJT移行期の人事部の役割についての2点をお伝えしていきたいと思います。

「静かな退職」とは

近頃、「静かな退職(サイレント・クイッティング)」についてのニュースや記事を目にする機会がないでしょうか。静かな退職とは、会社を辞めるわけではなく、仕事に対する熱意ややりがいを失い、必要最低限の業務だけを淡々とこなす働き方を指しています。近年、リモートワークの増加や業務のデジタル化に伴い、この現象が顕著に見られるようになっているようです。今回は、静かなる退職の原因と対応策について、お話しさせていただきます。

「静かな退職」が広まっている原因

 静かな退職が増加する主な原因は、以下の3点が挙げられます。

1.仕事に対する価値観の変化

働き方改革の影響もあり、ワークライフバランスに重きを置く人が増えました。昇進やキャリアアップを目指さず、プライベートを重視し、仕事と私生活の境界を明確にする働き方が主流になりつつあります。

2.多様な就業形態

テレワークやフレックスタイム制度などが増加したことで、従業員同士の直接的なコミュニケーションやチームワークが希薄になり、従業員が孤立感を抱くことがあります。結果、静かな退職を選択する従業員が増えています。

3.エンゲージメントの低下

従業員が企業のビジョンや目標に共感できず、自分の仕事に対する意義を見出せない場合、積極的に業務に取り組む意欲が低下します。これにより、従業員は最低限の業務のみを遂行する静かな退職の状態に陥ります。

「静かな退職」の対応策

静かな退職が増加すると、組織全体の生産性の低下や離職の前兆となる可能性があります。これらを防止するために、以下のような対策をとることが有効であると考えています。

人事評価制度の見直し

静かな退職を防止するために、人事評価制度を見直すことが効果的です。透明性や公平性がない人事評価制度のままでは、企業に対する貢献意欲は向上しません。成果が認められない状況が続けば、業務に対する熱意をさらに失うことになりかねません。人事評価制度を見直す際は、第三者から見てもわかりやすく、公平な制度を導入することが重要です。

キャリアアップの機会を提供

成長の機会があることで仕事への意欲が湧き、従業員の将来の不安を軽減できます。キャリアアップやスキルアップの支援があると、企業への帰属意識が高まり、積極的に業務に携わるようになることが期待できます。従業員が望むキャリアプランを実現できるよう、定期的な面談やアンケート調査などを実施することも有効です。 

新卒社員の「静かな退職」を防ぐために大事なOJT移行期の人事部の役割

新卒社員が入社して数か月。研修期間が終わり、OJTを通じて現場での実務が本格化するこの時期は、多くの企業にとって「静かな退職(サイレント・クイッティング)」のリスクが高まるタイミングです。これは、新卒社員が入社前にイメージしていた社会人像と実際に働き出すことで出てくるギャップにより、心のなかでモチベーションを失い、最低限の業務だけをこなし、やがて退職へとつながってしまう現象です。これを防ぐためには、現場主体のOJTにスムーズに移行すると同時に、入社説明会から面接、内定式や4月の入社以降の初期研修を担当していた人事部が「手を離す」のではなく、「心をつなぐ」姿勢を保ち続ける必要があります。

まず重要なのは、「人事部が見守り続けている」というメッセージを新卒社員に伝える仕組みを作ることです。OJTが始まると、日常的な接点は現場上司や先輩社員になりますが、人事部が定期的に面談を行うことで、「困ったことがあればいつでも相談できる場所がある」という心理的な安全基地となります。これにより、新卒社員は不安や孤立感を感じる前にSOSを出すことができ、早期の離職を防ぐことができます。

また、OJT担当者に対しても、人事部がしっかりとフォローアップを行うべきです。現場任せにするのではなく、「育成は現場だけの仕事ではない」というメッセージを組織全体に共有し、OJT担当者が過剰なプレッシャーを感じないように支援する体制を整えましょう。具体的には、OJT担当者向けの定期的な情報交換会や、簡易な進捗報告フォーマットを用意することが有効です。

さらに、新卒社員のモチベーションを高めるには、「自分の仕事が誰かの役に立っている」という実感を得られる場面を意図的に作ることが大切です。たとえば、他部署の先輩社員と交流する場や、業務の成果が社内で共有される「プチ報告会」などを通じて、自己効力感を育てることができると思います。

最後に、企業文化として「失敗を許容する風土」を育むことも忘れてはなりません。初めての実務ではミスも当然起こります。そうしたときに、上司や先輩からの暖かいフィードバックがあることで、新卒社員は自信を持ち、次にチャレンジする意欲を取り戻します。

人事部はOJT開始とともに役割を終えるのではなく、新卒社員の「伴走者」として、彼らが職場で活き活きと働き続けられる環境を創るための裏方支援を継続することが求められています。静かな退職を防ぐカギは、現場と人事の連携による「見えないサポート」の積み重ねにあると思います。

まとめ

静かな退職は何も新卒社員に限ったことではなく、2年目以降、あるいは中途入社の社員にも当てはまる観点だと捉え、人事部あるいは上司的な役割の方々は、個々人のパフォーマンスを最大限引き出すために色々と対応していくべきだということは言うまでもありません。

特に若手や新卒社員の期間は、まだまだ仕事に対しての考え方が定まっておらず、今後続く社会人生活を自分の思い通りに送っていくためにも、必要な考え方や実践が必要なトレーニング期間である、と言うことができると思います。その大事なトレーニング期間に、静かな退職状態で日々淡々と業務をこなすだけでは実にもったいないことであり、今のうちに色々な業務にチャレンジし、自分の可能性を高めていくことをしておかないと30代、40代になってから自分が困る、ということを常にお伝えすることが大事です。

また、自分の経験談をおもしろ、おかしく共有しながら、若手や新卒社員あるいはその他のメンバーのモチベーションを高めることができる先輩上司の数が多いほど、会社の成長にもつながると思います。
ちなみに具体的には言えませんが、私もとんでもない失敗を若手時代に経験しましたので、それを糧に今の業務にとても活かせていることがあります。

それもこれも、会社が色々な経験の場を提供してくれて、それにチャレンジできたからです。

もし自分が静かな退職状態だったらチャレンジもせず、色々な経験もできていなかったと思うとそれほど勿体無いことはないな、と本当に実感しているところです。

下村 勝光(しもむら かつみつ)
MIRACREATION株式会社 取締役。社会保険労務士法人MIRACREATION 代表社員。
仕事を通じて「笑いと驚き」を提供したい!をコンセプトに、北浜にある大阪証券取引所ビル8Fを本拠地としつつ、日々テレワーク中。
「難しいことをおもしろくして」をモットーに、現場に即した具体的なアドバイスを受けられると経営者から人気を博しております。
生まれは茨城県、育ちは大阪。趣味はフルマラソンで何とか3時間28分台を目指しております。

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