パワハラと指導の違いとは?~職場の健全なコミュニケーションのためにできること~

2025.6.27

パワハラと指導の違いとは?~職場の健全なコミュニケーションのためにできること~
みなさんこんにちは。
そろそろ夏本番へ、といった時期でしょうか。
日本では2025年月より企業側に従業員の熱中症対策で義務化された部分があり、職場における暑さ対策が変わっていくのではないかと思われます。

ちなみに、夏の高校野球の甲子園でも2023年大会から、5回裏終了後に原則としてクーリングタイム(給水タイム)を行うと決定。
2024年からはさらなる熱中症対策として、一部日程に朝・夕の2部制を導入。その代わりに16時以降に開始される試合についてはクーリングタイムを行わないことになりました。
暑さが厳しさを増す中で新たなルール設定(線引き)を行い、選手たちのパフォーマンスを発揮してもらおう、という訳です。

今回は、働き方改革や多様な人材の受け入れ、労働力不足、人口減少、と言った企業側にこれまでにない様々な対応策が求められている時代の中で、具体的な線引きが難しいと言われているパワハラと指導の境界線を踏まえた上で、指導職側ができるだけ自信を持って指導できるような情報をお伝えできればと思います。

行きすぎた指導はパワハラに?

職場における「指導」は、社員の成長を促し、組織の成果を高めるために欠かせないものです。しかし一方で、その「指導」が行き過ぎれば「パワーハラスメント(パワハラ)」と受け止められ、信頼関係が壊れ、職場全体の雰囲気が悪化してしまう恐れもあります。
管理職が安心して部下を指導するための視点と、指導される側が成長機会として受け止めるための心構えを整理します。

パワハラと指導の違いとは?

厚生労働省の定義によると、パワハラには以下の3つの要件が該当する場合に成立すると言われています。

1. 優越的な関係を背景にした言動であること
2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
3. 労働者の就業環境を害するもの

つまり、業務上必要であり、適切な方法・内容・態度で行われる「指導」は、パワハラには当たりません。
問題となるのは、感情的に怒鳴る、無視を続ける、繰り返し人格を否定する言葉を浴びせるなど、業務の範囲を逸脱した対応です。

例えば、指示の内容が、指示された人にとって、やりたくない仕事だったり、不得意な仕事であってもすぐにパワハラにはなりません。

 ・電話応対が苦手なのにクレーム対応を命じられた
 ・簡単すぎる雑務を依頼された

このようなことはあると思います。業務上必要なこと、指導育成上必要なプロセスだと思われる場合は、パワハラにはなりませんが、必要以上に嫌がらせのために、というニュアンスが入ってくるとパワハラと判断されるケースがあります。

また、何度教えても、理解しようとしない、反省の色もない人に、何度教えたら、わかるんだ!と語気を強く言ったとしてもパワハラではありません。
しかし、「何度教えたら、分かるんだ!この能無しが!だから、お前はダメなんだ!」と、言ってしまうとパワハラと言われても仕方がありません。

管理職が安心して指導するために大切なポイント

1.「目的」を明確にする

指導は「相手の行動を改善し、成長を促す」ことが目的です。
怒りや苛立ちに任せた発言ではなく、「この点を直せばもっと成果が上がる」「お客様により良い対応ができる」といった、前向きな意図を伝えましょう。

2.「事実」と「感情」を分ける

「いつ・どこで・何があったか」という客観的事実に基づいて話すことが大切です。
例えば「あなたはやる気がない」ではなく、「昨日の会議に10分遅刻し、事前資料の確認ができていなかった」など、具体的な行動にフォーカスしましょう。

3.「個室で一対一」「言葉を選ぶ」

人前での叱責や、厳しい言い方は、相手を必要以上に傷つけてしまうことがあります。
伝えるべきことがあるときは、一対一で落ち着いた場所を選び、尊重を込めた語り口で話すことが望まれます。

4.「言い方」や「態度」はソフトに

最近では、カスタマーハラスメントというフレーズが出てきたように、昔では神様であったお客様側でも、言葉や態度に少し気を遣った対応が求められる時代に入っています。
社内向けならなおさらだと考えて、意識的にソフトにしていきましょう。

1. 優しい言葉づかい 「〜してもらえますか」
2. 柔らかい・威圧感のない目線
3. 穏やかな雰囲気・表情

5.「一緒に考えよう」のスタンス

戦力になってもらうためにも一緒に取り組んでいこう、というスタンスで接していただきたいです。そのためには、根気が求められる時代だと思いますが、指導側も悩んでしまう状態になるようでしたら会社や同僚に相談し、一人で抱え込まないようにすべきです。
一人でなんとかしよう、と思うほど、イライラする局面が増え、感情的になってしまう方向へ進むケースが見受けられます。

1. 作業ミス発生時:チェック方法を「一緒に」考えよう、対策を「一緒に」考えよう
2. 業務負荷の整理:優先順位を「一緒に」整理しよう

6.「安全」を考え言うべきことは言う

ついつい油断して現場で怪我をしそうな局面に。それを見た上司もとっさに「危ない!!!何やってんだ!!」とついつい怒鳴ってしまう。
これは命の危険性を感じて本気で伝えたいから出た言葉です。

ただし、言いっぱなしだと言われた側も凹んでしまい、場合によってはあの言葉遣いはきついのではないか、という変な風向きにいく可能性が残ります。
やはりフォローが大事。怒鳴った後に、その理由を丁寧にお伝えすることで変な方向に行く可能性は激減するはずです。

指導を受ける側の心構え

指導をされると、自分を否定されたように感じることがあります。しかし、冷静に受け止めれば、それは「自分に期待してくれている」ことの裏返しでもあります。

1.感情的にならず「内容」に耳を傾ける

とっさに反論したくなる気持ちを抑え、まずは相手の言っている内容をしっかり受け止めましょう。そこには、職場での信頼を築くヒントが含まれているかもしれません。

2.メモを取り、行動を変える

指導をその場限りにせず、「次からどうするか」に焦点を当てましょう。指摘された点をメモし、改善のアクションを起こすことで、信頼回復や成長に繋がります。

3.わからないことは素直に聞く

「どう直せばいいかわからない」と感じたときは、そのままにせず、上司に相談してみましょう。「こうすれば良くなる」という答えを、一緒に探す姿勢が大切です。

指導は互いに育ち合うためのコミュニケーション

パワハラのリスクを恐れて、何も言えなくなることは、管理職にとっても、部下にとっても不幸です。大切なのは、「相手の成長を願っている」という気持ちを、伝え方や接し方に乗せることです。

そして、受け手もその想いを信じ、素直な姿勢で受け止めることで、職場全体が「学び合い」「支え合う」関係に変わっていきます。指導とは、一方的な命令ではなく、互いに育ち合うためのコミュニケーションなのです。

ここでとても大事な考え方を身につけておきたいところです。
叱責=パワハラではない、ということです。なんでもかんでもパワハラではない。
このように指導側だけでなく指導される側も最初から認識することによって、指導を正しく受け止める心構えができてくることになります。心構えができると指導される側もひょっとすると気が楽になる可能性すらあると考えています。

例えば、業務上、必要なルールがあります。そのルールを破れば、叱られて当然です。

・決められた段取りを飛ばして失敗し叱られた
・命に関わる現場で安全管理を怠り、危険を感じた上司に腕を掴まれた
・報告するように言われていたのに、報告しないまま帰宅して叱られた

これは叱られて当然。自分が悪い、反省して改善しよう、という流れを自分の中で作っていくことができればビジネスパーソンとしての成長にもつながると思います。

これを、失敗してすぐに叱られた、腕を掴まれて痛い、という点だけをクローズアップし、変な被害者意識をすぐに持ってしまう考え方が身についてしまうと、その本人が可哀想だと思います。
ここは初期指導すべき重要なポイントだと思います。

まとめ

パワハラと正しい指導の線引きは判断が難しい点も多く、実際にはケースバイケースになってしまいますが、パワハラと言われることにビビってしまい、正しい指導が全くできない状態は会社側だけでなく、指導されるべき人にも良くありません。

ぬるくなりすぎる職場は長期的に見るとダメであり、ある程度の緊張感ある指導は、皆のために必要である、ということを全社的に共有し続け、指導側が自信を持って対応できる会社にしてもらいたいものです。

下村 勝光(しもむら かつみつ)
MIRACREATION株式会社 取締役。社会保険労務士法人MIRACREATION 代表社員。
仕事を通じて「笑いと驚き」を提供したい!をコンセプトに、北浜にある大阪証券取引所ビル8Fを本拠地としつつ、日々テレワーク中。
「難しいことをおもしろくして」をモットーに、現場に即した具体的なアドバイスを受けられると経営者から人気を博しております。
生まれは茨城県、育ちは大阪。趣味はフルマラソンで何とか3時間28分台を目指しております。

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