社員の生産性を守る!企業が取り組むべき花粉症対策ガイド 公開日 2026.3.25 人事・総務向け 生産性UP 計画・準備 こんにちは。この時期になりますと「あいつ」に苦しめられています。あいつとは、花粉です。 花粉症になって早5年が過ぎ、なるまでは、上品な大人の方々が発症する類のものかと、憧れ的なものもありましたがなってみたらさあ大変。薬で誤魔化すものの確実に日々のパフォーマンスが下がっていることがわかります。私の長女も同じく花粉症持ち、でこの4月から社会人2年目になり2級建築士として業務にあたっているものの体はしんどいようです。 日本全体として花粉症が増えてきている中で、企業としても個人任せにできないレベルにまで影響が出てきていると思いますので、自分自身の学びのためにも今月は花粉症対策について整理してお伝えしたいと思います。 目次 はじめに 花粉症が職場に与える影響について 1. プレゼンティーイズムによる生産性低下 2.主な症状と業務への影響 3.企業が取り組む花粉症対策 4.情報提供・啓発活動 5.花粉の影響が少ない場所での研修について 6.就業規則・制度上の整備ポイント まとめ はじめに 花粉症は、スギやヒノキなどの植物の花粉が原因となるアレルギー疾患です。 環境省の調査によれば、日本人の約40%程の方々が花粉症に罹患していると推計されており、現代の職場において無視できない健康課題となっているようです。 症状のピークとなる2月下旬から5月上旬は、多くの企業で期末・期初の繁忙期と重なります。この時期に従業員のパフォーマンスが低下することは、企業の生産性に直接影響を及ぼします。人事労務担当者として、花粉症を「個人の問題」として放置するのではなく、組織として戦略的に対応することが求められていると考えております。 花粉症が職場に与える影響について 1.プレゼンティーイズムによる生産性低下 花粉症による職場への影響で特に注意が必要なのが「プレゼンティーイズム」です。これは、出勤しているにもかかわらず、症状によって業務遂行能力が低下している状態を指します。 第一生命経済研究所の試算では、花粉症による労働生産性の損失額は年間約3,800億円に上ると報告されています(2023年)。出勤はしていても、くしゃみ・鼻水・眼のかゆみ・集中力の低下といった症状が、業務の質と速度を著しく損ないます。私も目がかゆくてパソコンの画面が見えにくくなることもあります。 2.主な症状と業務への影響 花粉症の主な症状と業務への具体的影響 鼻症状(鼻水・鼻づまり) 会議中の集中力低下、電話応対の品質低下 眼症状(かゆみ・充血) PC作業の効率低下、資料確認ミスの増加 全身倦怠感・睡眠障害 判断力・創造性の低下、遅刻・欠勤リスクの増加 抗ヒスタミン薬の眠気 作業中の集中力低下(特に午後の業務) 3.企業が取り組む花粉症対策 ①職場環境の整備 花粉症対策の基本は、花粉を職場に持ち込まないことです。どこまで持ち込まなくすることができるかわかりませんが、以下の環境整備を検討するのがいいかもしれません。 ・空調フィルターの定期清掃・高性能フィルターへの交換 ・玄関・エントランスへの空気清浄機の設置 ・窓の開閉ルールの整備(花粉飛散量の多い時間帯の換気方法の見直し) ・社内でのマスク着用の推奨(着用を強制しない点に留意) ・洗眼設備・点眼薬の常備 ②働き方の柔軟化 花粉症の症状が重い従業員に対しては、働き方そのものを見直すことが効果的かもしれません。 ・テレワーク・在宅勤務の活用:通勤時の花粉曝露を大幅に低減できます ・時差出勤・フレックスタイム制の活用:花粉飛散量の多い時間帯(10時〜14時頃)の通勤を回避 ・症状の重い日の有給休暇取得の奨励(取得しやすい雰囲気づくり) 4.情報提供・啓発活動 従業員が適切に自己管理できるよう、会社として情報提供を行うことも重要な取り組みです。花粉飛散情報のイントラネット掲載、産業医・保健師による相談窓口の整備、早期受診の勧奨(症状が出る前の1〜2週間前からの治療が効果的である旨の周知)などが挙げられます。 5.花粉の影響が少ない場所での研修について ①なぜ「場所の選択」が有効なのか 花粉症対策として見落とされがちなのが、「研修や合宿の開催場所の選び」です。スギ・ヒノキ花粉の飛散量は、地域・標高・気候によって大きく異なります。 花粉飛散ピーク時期(2月下旬〜5月上旬)に、花粉の少ない環境で研修を実施することは、参加者の体調管理と研修効果の両方を高める合理的なアプローチです。いつもの会場に、いつも通り手配して、というのが楽ではありますが、今一度、花粉量、という観点での場所選びも検討されてもいいかもしれません。特に4月は新卒社員の研修時期とも重なりますので、新卒社員への花粉症状況をヒアリングした上で、検討する、というのが効果的かと思われます。 ②花粉の少ない地域・環境の特徴 花粉が少ない研修適地の特徴 高標高エリア 標高1,000m以上の山岳・高原地帯はスギ・ヒノキの植生が少なく飛散量が少ない 北海道 本州に比べスギ花粉の飛散量が極めて少ない(シラカバ花粉には注意) 沖縄・南西諸島 スギ・ヒノキ花粉の飛散はほぼなし。 海沿いのリゾート施設 海風が花粉を拡散・流出させる効果がある場合も 都市部の屋内研修施設 空気清浄設備の充実した施設を選択することで花粉を軽減 ③研修効果と業務メリット 花粉の少ない環境で研修を行うことで、参加者は症状による不快感から解放され、学習への集中力が向上します。また、眠気を引き起こす抗ヒスタミン薬の服用を一時的に減らすことができ、ディスカッションやワークショップの質も向上します。 ④実施にあたっての留意点 ・参加者のアレルギー情報を事前に確認し、目的地のアレルゲン情報も調査する ・花粉情報は年によって変動するため、開催年の予報を直前に確認する ・移動費・宿泊費が増加する場合は費用対効果を検証したうえで予算化する 6.就業規則・制度上の整備ポイント 花粉症対策を継続的・公平に運用するために、以下の制度的整備を検討してください。 ・傷病手当・特別休暇の活用:重症化した場合の休暇取得ルールを明確化する ・テレワーク規程:花粉症等の健康理由による在宅勤務申請の手続きを整備する ・安全衛生委員会での定期議題化:毎年2月頃を目安に花粉症対策を議題として取り上げる ・産業医・保健師との連携:症状の重い従業員への個別対応フロー(受診勧奨・業務軽減)を設計する まとめ 花粉症対策は、従業員の健康管理にとどまらず、生産性向上・人材定着・企業ブランドの向上に直結する経営課題です。人事労務担当者として、以下の3つの視点で対策を整理することをお勧めします。 花粉症対策の3つの視点 環境対策 職場に花粉を持ち込まない物理的環境の整備 制度対策 テレワーク・時差出勤・休暇取得など柔軟な働き方の制度化 研修・育成戦略 花粉飛散期における研修場所の戦略的選択による学習効果の最大化 花粉の季節に「なんとなく乗り越える」職場から、「組織として賢く対応する」職場へ。そのための制度設計・環境整備を、ぜひ今シーズンから実践してみてください。 あと、暑さから逃れる避暑地ではなく、花粉から逃れる「避粉地」という言葉もよく聞くようになりました。旅行会社が花粉時期には「避粉地」への旅行をおすすめ!といった売り出し方をしているケースもあるようですが、上手いこと表現するなーと感心させられた記憶があります。地理的条件や植生の違いにより、花粉の発生が少ない場所のことでして、例えば、群馬県草津市、栃木県日光市、岐阜県高山市、といった観光地も兼ねている地域が対象となっています。 私も花粉時期だけは上記の3地域に事務所を構えるのも悪くないな、と思っているところです。皆様の中でも会社の保養所や研修施設場所を探す上で3地域は交通アクセス的にも検討の余地あり、だと思っています。参考になれば幸いです。 参考:花粉症環境保健マニュアル2022|環境省 花粉情報サイト(案内ページ):https://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/ PDF直接リンク:https://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/2022_full.pdf 花粉の大量飛散が日本経済に及ぼす影響|日本生産性本部 https://www.dlri.co.jp/files/macro/233202.pdf 労働安全衛生に関するガイドライン|厚生労働省 事業場における労働者の健康保持増進について:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/anzeneisei02.html 下村 勝光(しもむら かつみつ) MIRACREATION株式会社 取締役。社会保険労務士法人MIRACREATION 代表社員。 仕事を通じて「笑いと驚き」を提供したい!をコンセプトに、北浜にある大阪証券取引所ビル8Fを本拠地としつつ、日々テレワーク中。 「難しいことをおもしろくして」をモットーに、現場に即した具体的なアドバイスを受けられると経営者から人気を博しております。 生まれは茨城県、育ちは大阪。趣味はフルマラソンで何とか3時間28分台を目指しております。 関連記事 >研修を“やっただけ”で終わらせないための効果測定とは? 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