人事労務での二刀流を生み出すために知っておくべきアンコンシャスバイアスについて

2022.8.24

人事労務での二刀流を生み出すために知っておくべきアンコンシャスバイアスについて
行動制限なし、酷暑の夏休みも終わり、いよいよ収穫の秋、食欲の秋に向けて更なる動きが出てくる時期となりました。
人事労務の観点では、この時期では最低賃金のアップがこれまでにないレベルで実施される予定で、人件費増加に頭を悩まされる企業様も増えていることを実感しております。
8月を振り返ってみた時に私の中で一番印象に残ったのが、お笑い芸人をやりつつ、夢であったプロ野球選手としてピッチャーになった「やればできる」というフレーズで売れているお笑いコンビ。超前向きで、時には行き過ぎているのではと思わされる程のプラス思考発言ではありますが、先が見えにくい時代と言われている中で、あれくらいのプラス思考もありだと思っています。
「お笑い芸人」と「野球選手」の二刀流。
芸人としての仕事をしながら野球選手として練習や試合の時間を捻出しつつ、
両方ともに全力で成果を出していく。野球では勝ち負けに関係なく、今の自分に出し切れる力を全て出して取り組んでいることに価値があると明言していた姿に心を打たれました。
芸人の知名度が生かされ、地方球場での観客数が約10倍の5000人程度となったり、グッズの売れ行きもこれまでにないレベルでお店に方々もびっくりする程、とのこと。日本全体の活性化に向け、このような二刀流事例は増えてきてもらいたいと願っているところです。

今回は二刀流をキーワードに、人事労務管理面で知っておいてもらいたい情報をお伝えしていきたいと思います。

ハイブリッドワーク、という名の二刀流

コロナの感染拡大によるリモートワークの普及は、労使ともに働き方に対する考え方を大きく変えるきっかけとなりました。
パーソルキャリアが2022年8月4日に公表した「dodaビジネスパーソンと企業の転職意識ギャップ調査」からオフィスワークとテレワークを組み合わせた「ハイブリッドワーク」に関する意識について取り上げます。なお本調査は、転職を検討している又は興味のある150名と、転職を1年以内に経験した100名(以下、「個人」)、及び企業の代表として人事担当者200名(以下、「企業」)の計450名を対象に実施されたものです。

まずはハイブリッドワークの導入状況ですが、「doda」が扱う約15万件の求人のうち、「テレワーク」可能求人の割合は、2020年1月と2022年6月時点で比較すると16.8倍となっています。また前年同月比でも約2.2倍。企業側の調査でもハイブリッドワークを「すでに導入している」「導入予定である」と回答した企業は計56.5%となり、「導入意向がある(23.5%)」も含めると計80.0%に上っています。このように既にテレワークを前提として働き方は急速に普及していることが分かります。

このような状況になってくると、転職希望者の志望動機にハイブリッドワークの導入状況が影響を与えることが予想されますが、「非常に影響する」「やや影響する」を合計すると約7割となっており、今後の会社選びにハイブリッドワークの可否が一定程度影響することが明らかとなっています。業種・職種によってはそもそもテレワークが難しい場合がありますが、テレワークが可能な業種や職種であるにも関わらず、テレワークが選択できないとなると、採用上の大きな制約になっていくと予想されます。

テレワークはコロナの感染拡大によるBCPとして一気に普及しましたが、これからは多様で柔軟な働き方を実現するための当たり前の働き方の選択肢になっていくと考える必要があるでしょう。

大幅に伸びている人事労務諸制度について

コロナ等による職場環境の変化を受け、企業の人事労務諸制度の見直しが積極的に行われています。そこで今回は労務行政研究所が行った調査から企業の人事労務諸制度の実施状況について見ていきたいと思います。なお、この調査の対象は、全国証券市場の上場企業(新興市場の上場企業も含む)3,647社と、非上場企業1,850社の合計5,497社で今回の集計は回答のあった292社の結果。

これによれば、企業の人事労務諸制度の実施状況は以下のようになっています。

90.8% 定年後の再雇用制度(役員は除く)
89.0% ハラスメントに関する相談窓口の設置
84.9% 内部通報制度
83.9% 仕事上での旧姓使用
82.5% ハラスメント防止規程の作成
81.8% 契約社員の雇用
79.8% オンライン面接
72.6% パートタイマー・アルバイトの雇用
69.5% メンタルヘルスに関する相談窓口の設置
69.5% 裁判員休暇
67.5% テレワーク
41.1% 心の健康を目的とするカウンセリング
40.1% フレックスタイム制
39.4% 副業・兼業の容認
34.6% 私傷病休職からの復職支援プログラム
34.6% 男性社員の育児休業取得促進
26.4% 70歳までの就業機会確保措置
16.8% 61歳以上の定年制
12.0% 不妊治療への支援

上位には法律で義務化されているものが多く並んでいます。一方、近年注目の以下の施策については、大幅な伸びを見せています。

■仕事上での旧姓使用 (名前の二刀流)
 2018年 67.5%→2022年 83.9%
■副業・兼業の容認  (仕事の二刀流)
 2018年 10.7%→2022年 39.4%
■不妊治療への支援  (働き方の二刀流)
 2018年 4.5%→2022年 12.0%

上記内容について、キーワードは「多様性」になろうかと感じています。
様々な価値観や在り方を受け入れることが大事な世の中と言われている中で、実際に従業員からの要望が多様となる中で、企業としてどこまで受け入れることができるか、その許容範囲を広げることが大事となります。
最近ではアンコンシャス・バイアス、という表現で、「無意識に、気づかずに、知らず知らずのうちに」「こうだ、そうだ、こうに違いない」と思い込むことにより、間違った判断を引き起こし、決めつけ・押しつけから相手や周囲にネガティブな影響を引き起こすことがある点について注目されています。

間違った判断からネガティブな影響を引き起こす?アンコンシャス・バイアスについて

定義は先ほど申し上げたように、端的に表現すると「無意識のうちに、こうだと思いこむこと」となります。
職場でよく問題となる思い込みは、会社や上司・リーダー層が偏った、時代錯誤した思い込みにより、部下・後輩、若手との考え方にずれが生じ、ハラスメントや退職につながることとなります。

よくあるアンコンシャスバイアスとして

①慈悲的(好意的)差別
少数派に対する好意的であるが偏った思い込みで、勝手に決めてしまう
例)育児中・介護中だから無理させない方がいい/制約があるからできなくても仕方がない
②ハロー効果
特に優れた点(劣った点)で、全てを良い方向(悪い方向)に考えてしまう
例)良い点や悪い点ばかりに目がいき、他の要素を考慮せずに相手の評価を決めてしまう
③確証バイアス
自分の信念や仮説を裏付ける情報ばかりを集め、思い込みを強化してしまう
例)効率が重要だと思っていると、効率化で成功した事例ばかりを集めてしまう。また、自分が考える効率の基準に満たない人や、違う仕事のやり方を極端に嫌う。

「口癖からアンコンシャスバイアスに気づく」

注意する口癖 自分への問いかけ
・普通は◯◯
・◯◯は常識だ
・みんな◯◯
・たいていの場合は
自分の普通や常識にとらわれていないか
自分の価値観を押しつけていないか
・どうせ無理、ダメ
・できるわけがない
・◯◯に違いない
自分の可能性を諦めていないか
相手の能力を勝手に決めていないか
・そんなはずはない
・◯◯に決まっている
・◯◯に違いない
・それは間違っている
事実は本当にそれだけなのか
自分の解釈を押しつけていませんか
・こうするべき
・こうでなければならない
理想を目指しすぎて、自分を苦しめていないか
勝手な理想を相手に押しつけていないか
・これくらいのこと
・そんなことで
・◯◯しすぎている
基準は妥当なのか
自分の基準を押しつけていないか

まとめ

今後、様々な二刀流が社内で出てくる時代に入っています。
その時に、アンコンシャスバイアスに陥っていないか、一度じっくり考えることによって、今の時代にあった、自社にあった判断に近づくものと思います。
まずは自分の思い込みに気づくことから始め、「やればできる」精神で実践していきましょう!

下村 勝光(しもむら かつみつ)
MIRACREATION株式会社 取締役。社会保険労務士法人MIRACREATION 代表社員。
仕事を通じて「笑いと驚き」を提供したい!をコンセプトに、北浜にある大阪証券取引所ビル8Fを本拠地としつつ、日々テレワーク中。
「難しいことをおもしろくして」をモットーに、現場に即した具体的なアドバイスを受けられると経営者から人気を博しております。
生まれは茨城県、育ちは大阪。趣味はフルマラソンで何とか3時間28分台を目指しております。

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