心理的安全性とキャリア安全性の向上が若手人材の定着を助ける理由 2024.2.16 モチベーションUP リーダー・主任・マネージャー 経営層・管理職向け 計画・準備 みなさんこんにちは。 日経平均がバブル崩壊後の最高値を更新し新聞紙上を賑やかしておりますが、実態経済として、なかなかピンとこない方々も多いかもしれません。 物価の上昇に合わせて、今回の春闘も軒並み5%以上のベアを要求されている組合も多く、経営側からすると頭を悩まされる判断をすべき時期に来ているとは思いますが、中には10%程度を要求している組合もある中で、いよいよ賃上げが毎年の恒例行事になりつつありそうな雰囲気が出てきました。 みなさんが賃上げされるようになってこそ、初めて日本景気が良くなっているのかも、と実感できると思いますし、なんだかんだ言いながらも日本が世界の主要国と相対比較して物価が安い国の仲間入りし、「日本は大丈夫なのか」と不安に思われる方々も増えてきていると思いますので、今後5年くらいは賃上げイケイケ状態で進んで行った方が長期的にみて良い方向に行く、と信じて弊社でも賃上げを実施していきたいと考えているところです。 さて今回は、4月から入社してくる新卒社員をはじめ、若手社員の定着に向けたプランを考えたり、見直しをする企業様が多い時期かと思いますので、「キャリア安全性」をメインにお伝えしていきたいと思います。 目次 心理的安全性とキャリア安全性について ここで知っておきたい、若手の入社前の社会的活動について 若手に「イケてる」自分だと感じてもらうために まとめ 心理的安全性とキャリア安全性について みなさんの中には心理的安全性、という言葉を見聞きしたことのある方々も多いと思いますが、キャリア安全性、という概念があることを意外とご存じない方が多いことに最近気づきましたので、まずは基本的な概念を知ってもらいたいと思います。 心理的安全性とは 心理的安全性とは、アメリカのハーバード・ビジネススクールの教授であるエイミー・C・エドモンドソンさんが1999年に論文で発表した概念で、個人がリスクを取る、質問をする、課題を提起する、または失敗を共有することを恐れずに行える環境のことを指します。 具体的には、ミスや失敗の報告、誰かの意見に対する反論など、普通ならなかなか言い出せないようなことを安心して話せる状態で、心理的安全性が高い組織やチームほど、パフォーマンスが向上することが分かっています。エドモンドソンさんは、ミスの少ない医療チームほど、ミスの可能性についてメンバー同士が率直に話し合い、ミスを回避するための方法を見つけようとしていると言っています。 キャリア安全性とは キャリア安全性とは、こちらもまたハーバードのエドモンドさんが1999年に言い出された概念で、自分のキャリアが長期間、安全な状態でいられると認識できるかどうか、その度合い、ということとなります。 かなり簡単に表現をしますと、「自分の仕事、キャリアってイケてる?」と言う感じになります。 職場での役割の安定性、スキル向上の機会、昇進やキャリアパスの進展などが含まれます。キャリア安全性の感覚は、従業員が自分の職に対して高いコミットメントを持ち、長期的に組織に留まる意欲を持つことに貢献します。また、従業員が自分の能力を継続的に開発し、変化する市場や技術の要求に適応できるようにすることも重要です。 整理すると、次の3つの視点があると言われています。 1. 時間視座: 現在の会社の仕事を継続しても成長できないと感じるかどうか。 2. 市場視座: 他社や他部署で通用しないと感じるかどうか。 3. 比較視座: 学生時代の友人や知人と比較した際に差を感じるかどうか。 これらの要素を満たす環境を作ることで、若手社員のモチベーションを高め、人材確保・育成に寄与することができると言われています。 では、心理的安全性とキャリア安全性との相関関係についてですが、心理的安全性とキャリア安全性は密接に関連していると言われています。 どういうことかと言いますと心理的安全性の高い職場は、若手が新しいスキルを学び、挑戦し、成長する機会を提供することで、キャリアの安全性を強化することができます。若手が自分の意見を自由に表現し、イノベーションに貢献することを奨励される職場では、職業的成長とキャリアの進展の機会が増えます。このような環境では、若手は自分の能力を最大限に活用し、キャリアの成長を遂げることが可能です。 一方で、心理的安全性の低い環境はキャリア安全性にも悪影響を及ぼす可能性があります。若手がリスクを取ることや意見を言うことを恐れる場合、彼らは新しいスキルを学ぶ機会を逃し、キャリアの成長が停滞する可能性があります。 心理的安全性の土台がある上に、キャリア安全性を実現できる経験や機会を与えることができる、と言ったところでしょう。 ここで知っておきたい、若手の入社前の社会的活動について 例えば、新卒についての入社前の社会的活動について多いのが、インターンシップによる複数の企業や職場の見学、複数の社会人から仕事の話を聞く経験(授業やユーチューブ等)と言った、自社に入社前に自社以外の情報を見聞きし、入社後の会社の良し悪し、を判断する材料を持った状態で自社で働いている、という現実を会社や育成担当となるマネージャーは理解しておくべきだ、と強く言いたいです。 現在の管理職層が若手時代の時のように、転職は恥ずかしいこと、異動転勤は拒否できずに従わない=退職しないといけないといった世代が、管理職に昇進できなくてこんなに頑張っているのに自分は評価されていないから別の道を探そうとか、親が高齢になり介護が必要になったから、といったよくある転職タイミングではなく、最近の若手層は20代の時でも他社情報との比較をしながら働いているので、自社でこのまま働いていて良いのか、と転職を意識する「見切りのタイミング」が早期化していることを前提に、定着を目指して取り組んでいく必要がある、と言うこととなります。 では、このキャリア安全性の概念を踏まえ、育成や管理を担当する管理職は何をすべきなのか。 うちの会社で働くことによって、時間的にも市場的にも他人と比較しても「イケてる」自分になれるよ、と若手に思ってもらうためにどのような指導をすべきなのか、について考えていく必要があります! 若手に「イケてる」自分だと感じてもらうために 働き方改革の中で、自分が若手の頃にように、夜遅くまで経験を積めるから、と言ってがむしゃらに頑張っていた時と同じように育てていくことはできません。若手育成と労働環境改善の両立はかなりハードルが高く、今では有給休暇の取得といった労働日数まで減っていく傾向にある中、いかに時間効率的に成長につながる業務経験や機会を自然な流れで提供していくか、がポイントなります。 次の3点をご紹介します。 (1)部下がこれまでしたことがない仕事を依頼する 当たり前と言われればそれまでですが、人不足の中でついつい最初に任せた仕事ばかりをさせていませんか。 マンネリを感じる前に新しい刺激を与えないと、本人もこのまま同じことが続くのだ、と勝手に諦めてしまい兼ねません。あらかじめ、年間計画や育成計画を提示していても安心はできません。計画の中で現在どの地点にいるのか、を説明し、安心させることが大事ですので、説明責任を果たせているのか、をご確認ください。 (2)部下に自身の知り合いを紹介する これは意外と効果があるようで、部下からすると自分のことを認められた、承認されている、期待されている、と感じることができるようです。また、その知り合いの方から「いつも良い部下がいることを聞かされているけど、あなたのことなんですね」的なことを聞いたものなら、効果は上がると言われています。 (3)イベントや社内外の勉強会等に部下を誘う・紹介する 会社内だけにとどまらず、成長に機会として外を見せてもらえる、と言うのもキャリア安全性が高まることを実感できるきっかけになるようです。特に、今まで見聞きしたことのない予想外のイベントや勉強会といった若手本人の視界の外にあった機会を提供することで、世界観を広げることに繋げることができます。 あと、上司側のテクニックとして部下と一緒に参加するのではなく、上司が参加しようと思っていたが急用が入り、自分の代わりに参加してきて、と若手に任せることで、若手側も仕方ないな、頑張って参加してみよう、とこれまで興味のなかった内容についてのイベント等にも参加せざるをえない自然な理由ができるので、たまにはこの手法を使われることもおすすめしております。 まとめ 管理職自身が若手時代に育ってきた労働環境と現在の環境が違う中で、いかに若手の見切りタイミングが早期化していることを知り、自社に残って働くことがいかに自分にとってイケているのか、と感じてもらえるように、経験と機会を与えることができるよう、指導育成方法を改めてチェックし、変革させていくことが求められています。 管理職の皆様も大変だと思いますが、若手の定着育成活動を通じて、イケてる管理職を目指していきましょう! 下村 勝光(しもむら かつみつ) MIRACREATION株式会社 取締役。社会保険労務士法人MIRACREATION 代表社員。 仕事を通じて「笑いと驚き」を提供したい!をコンセプトに、北浜にある大阪証券取引所ビル8Fを本拠地としつつ、日々テレワーク中。 「難しいことをおもしろくして」をモットーに、現場に即した具体的なアドバイスを受けられると経営者から人気を博しております。 生まれは茨城県、育ちは大阪。趣味はフルマラソンで何とか3時間28分台を目指しております。 関連記事 >キャリア自律の観点や新NISAの内容を含めた新入社員の教育内容について >【2024年10月から】社会保険の適用範囲拡大になるルール改正!対象者と対応ポイント >【評価は個人や組織を促進する重要なツール?】改めて押さえておくべき育成や研修、評価について CO-MITでは、様々な目的から全国で研修・合宿施設の検索が行えます。 >研修合宿施設検索サイト「CO-MIT(コミット)」で施設検索する! また、ご希望の研修合宿を一括手配する「専門家に相談」サービスもご用意しております。 ホテルや研修センターをはじめ、全国のさまざまな施設と緊密に連携。研修や合宿の目的・日時・参加人数などを踏まえ、プロの視点から最適な施設および備品等の選定・提案・手配を進めます。 ぜひお気軽にご利用ください。 > 専門家に相談する! 記事一覧へ
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