自社内から新型コロナウイルス罹患者が出たら?新型コロナウイルスへの対応を5つのパターンで整理!

2020.3.19

自社内から新型コロナウイルス罹患者が出たら?新型コロナウイルスへの対応を5つのパターンで整理!

加速する新型コロナウイルスの影響

本記事がアップされる時点でもまだまだ日本国内および世界各国に新型コロナウイルスの影響が拡大している状況かと思います。

騒がれすぎでは、といった声もある一方で、イベントの中止や無観客化、東京オリンピック開催の危機、といった話が出てくる、とんでもない非常事態に陥っていることは事実。
私個人としても、2月のタイ・ミャンマー、3月のベトナムへの視察の中止、3月1日の鹿児島マラソンの中止、子供(小学生・中学生・高校生)3人の自宅待機への対応や参列予定だった中学生の卒業式に参加できない…等、ウイルスの影響をモロに受け、当たり前の有り難さを、身をもって感じている1人です。

ついつい気持ちが落ち込んでしまいそうな状況の中、今回は新型コロナウイルスにより発生する労務管理(特に、休む・休まない、について)を、あくまで私見ではありますが整理してお伝えし、この前代未聞の危機から日本や世界を救う一助となれば、と考えております。

今回の新型コロナウイルス感染症とは

まず知っておいてもらいたいこととしては、令和2年1月28日の官報に掲載されているように「指定感染症」に定められている、ということです。
指定感染症とは何か、といいますと、感染症法上の規定の全部又は一部を準用しなければ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるものとして政令で定めるもの(感染症法第6条) 、となります。

指定感染症に指定されると次の3つのことが可能となります。

①患者に対する入院措置や公費による適切な医療の提供
②医師による迅速な届出による患者の把握
③患者発生時の積極的な接触者調査が可能

したがって、我々が最近よく耳にする、感染者がどこそこのお店に行っていた、
という情報も③の接触者調査から明らかになっている情報と言えます。

あと、指定感染症である新型コロナに罹患した社員本人を休ませる場合は、労働基準法上の休業手当を会社から支給する義務は無い家族が罹患しているから社員本人を休ませる場合は休業手当の支給義務はある、という点が大事なポイントとなります。

よく質問を受ける労務管理上の5つのパターン

 本人が感染した、本人が少し体調を崩している、同居の家族が感染した、同居の家族に体調を崩している者がいる、子供が休校で家にいるので会社に行けない、この5つのパターンで整理してみたいと思います。

①本人が感染した
 感染したことが明らかな場合、当然会社は休んでもらいます。
指定感染症で休ませる場合、労働基準法上の休業手当を会社から支給する義務はありません。一般的には4日以上休まれることが予測されますので、健康保険制度から支給される傷病手当金を使います。とは言っても傷病手当金からは日額の約3分の2しか支給されませんので、満額の給与を確保したい場合は、有給休暇を取得することになります。有給休暇の残日数が不足している場合は、傷病手当金の活用か、会社側が設定する特別休暇扱いにしてもらうか、という選択になろうかと思います。できれば今回は特別休暇扱いにしてくれる会社が多く出てくることを期待しています。

②本人が少し体調を崩している
 国は37.5度以上の発熱があった場合、と言っているが、朝体温を測ったら37.4度で少ししんどい、といった場合に、出社すべきか休もうかを悩まれるケースもあろうかと思います。このご時世ですので、無理して出社してはいけません。各社事情があるのは承知で申し上げますが、やはり会社を休むか、在宅勤務対応をするか、を考えるべきです。現場作業等、在宅勤務ができない職種の場合は無理してでも出社しようとされる方もいると思いますが、もし新型コロナだった場合、他の社員へ多大な迷惑をかけてしまうこと、会社の風評被害も予測されますのでここ1ヶ月くらいは特に無理は禁物です。

③同居の家族が感染した
 家族から新型コロナ罹患者が出た場合、本人も当然に濃厚接触者として保菌している可能性が高くなります。可能な限り、休ませるか在宅勤務等で対応することを模索すべきです。ちなみに、家族が罹患して本人を休ませる場合は会社側には休業手当の支給義務があります。休業手当を支給して休ませるか、または本人に有給休暇を使ってもらうか、有給残日数が不足している場合は特別休暇を付与するという対応を考えていくべきです。

④同居の家族に体調を崩している者がいる
 37度の発熱がありしんどいと言っている家族がいる、出社してもいいですかと、社員から会社に問合せがあった場合。
どこまで過剰に反応するか、という範囲だと思います。業務における納期等までに余裕がある、在宅勤務できる環境がある、変わりに仕事をしてもらえる社員がいる、という場合は休んでもらってもいいかもしれません。休業手当の支給義務が発生しますが、有給の取得を促して様子見をするケースも出てくるかもしれません。

ただ、あまりにも過剰に反応しすぎるのも会社運営上、支障が出てくることも多々あろうかと思いますので、社員である本人があくまで元気なのであれば通常出勤もありだと思います。ただし、当該社員には毎朝体温の計測とその報告を義務として、状況を把握していくこと。しかも、咳やクシャミをするようだと他の社員との距離を取る、といった対応を行うべきかと思います。

⑤子供が休校で仕事に行けない
 3月2日からスタートした子供休校問題。有給休暇とは別に、特別休暇として休ませた場合に、1日あたりの支給上限金額はあるものの国から会社に助成金を支給してもらえる制度を活用しながら、と考える場合もあれば、本人の有給休暇を使ってもらった方が何かと都合が良い、と考えるケースもあります。

また、この機会に可能であれば、お子様と一緒に職場に同伴出勤、というのもアリだと思いますが、一つ心配なのが職場で子供が怪我をしたり、職場の備品を誤って潰したら、といった点です。お子様との同伴出勤は会社側からの要請ではなく、あくまで社員本人からの要請であるケースが基本だと思いますので、労使間で例えば、職場で子供が怪我をしても会社には一切迷惑をかけない、といった念書のようなものを取り交わし、不要なトラブルを避ける状況を作った上で実施してもよいかとは思います。会社側としては念書があるから何もしなくても良い、ということではなく、お子様が社内にいても安全な環境を用意するのは必須ではありますが。

研修参加者等、自社内から新型コロナ罹患者が発生した場合

今回のコロナウイルスの怖いところは、本人に自覚症状が無い中で知らない間に菌をばら撒いていた、という点だと思っています。
研修参加のシチュエーションは様々ですが、おそらく濃厚接触の状態であることが予測されます。
研修に参加していたあの社員が罹患した、という情報が社内で共有されれば、他の参加者からすると、「あいつのせいで自分もコロナかも」と思ってしまうかもしれません。
今回のコロナは自分の意図しないところで保菌しているかもしれない、ひょっとすると今の自分も保菌者かもしれず、たまたま自分は発症していないだけである。たしかに「あいつ」が発症したので怖い状況になっているのは事実だが、「あいつ」も被害者。「あいつ」だけの責任にしてはいけない。皆でこの緊急事態を乗り越えていくのだ、といった発想で取り組んでもらいたいと思います。

新型コロナによって、これまで実施したことのなかったことに挑戦し、数年後振り返った時に、あの時があったから今がある、という前向きな取り組みを積み重ねていきたいものですね。

コロナ船による令和維新へ。これを実現して、予定が変更した分を取り戻しましょう!

下村 勝光(しもむら かつみつ)
MIRACREATION株式会社 取締役。社会保険労務士法人MIRACREATION 代表社員。
仕事を通じて「笑いと驚き」を提供したい!をコンセプトに、北浜にある大阪証券取引所ビル8Fを本拠地としつつ、日々テレワーク中。
「難しいことをおもしろくして」をモットーに、現場に即した具体的なアドバイスを受けられると経営者から人気を博しております。
生まれは茨城県、育ちは大阪。趣味はフルマラソンで何とか3時間28分台を目指しております。

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