【知っておきたい】コロナ労災に関する考え方やよくある労災事例 2021.11.29 アフターコロナ 人事・総務向け 労務管理 経営層・管理職向け いよいよ2021年も終わりに向けて、残すところあと少しとなりました。 コロナ禍で働き方を見直す、考え直す機会となりましたが、東京都では一部のホテルの客室を借上げ、都内で働く方へテレワーク用としてスペースを一日200室程度、12月末まで提供予定。 対象地域は、 墨田区、江東区、目黒区、大田区、世田谷区、中野区、杉並区、北区、荒川区、板橋区、 練馬区、足立区、葛飾区、江戸川区 のようで、利用するには一律1000円の負担とのこと。 原則午前8時から午後7時までで、詳細な時間等はホテルによって違うようですが、テレワークをしたくても自宅ではできない環境の方も多い中で、このような行政サービスはありがたいものです。 コロナ重症化を防ぐ飲み薬の開発が進んでいる中でまだまだ油断できませんので、テレワーク勤務やワーケーション等の実施により安全で楽しく「時間の有効活用」ができればと思います。 目次 労災に値しない?!コロナ労災は感染者の1% 労災かくし案件の事例 どういうパターンで労災が明るみになるのか 労災ってそもそも何? 職場でコロナクラスターが発生した場合 労災に値しない?!コロナ労災は感染者の1% さて先日、「コロナ労災は感染者の1%」という新聞記事がありました。 直感的に1%は少ない、と感じています。ひょっとすると労災かくしが起こっているのではと思うところで、社労士の立場から申し上げますと、労災かくしは必ず明るみになり、労働基準監督署の調査が入ること間違いなし、となりますので絶対にやってはいけないことだと断言しておきます。 記事の内容の概要としては、コロナ対応のために、生活に必要最低限の外出しかしていないのにコロナ陽性となった。どう考えても職場で感染したとしか考えられない、と思った社員さんが自宅療養を経て入院。退院後に会社の上司に労災保険の申請をお願いしたが、まずは有給休暇を消化してもらいたい、と言われた、とのこと。 よくありそうなお話だと思いませんか。 厚生労働省の集計では、コロナ感染に伴う労災申請は2021年9月末で1万8637件でこのうち労災認定されたのは1万4834件、と約80%の認定率で、感染者総数170万人超の1%弱となっているようです。約80%のうち、77%が医療従事者ということで、職場で感染した可能性を判断しやすい医療従事者以外はそもそも労災申請自体が少ないのではないか、とデータから見て思います。 クラスターの発生場所は2021年11月初旬までの累計で「職場」が約20%と多く、業務や職場環境が原因であるコロナ感染が起きている可能性は高いのではないか、と思っています。 ちなみに、厚生労働省HP掲載「ブラック企業リスト」の10%ほどが労災かくし案件と言われています。 労災かくし案件の事例 例えば、次のような事例があります。 ①会社敷地内で発生したフォークリフトと労働者との衝突事故を「交通事故」として労災申請しない ②手すりのない高所作業場から墜落事故を「階段からの転落」として労災申請しない ③安全カバーのない食肉加工機械で負ったケガを「包丁使用中のケガ」として労災申請しない ①については、嘘をついて衝突事故を交通事故として普通の病院で治療を受けさせ、無事に治癒することを会社側は期待しています。または、普通の病院で治療を受けてさえいれば、誰にバレることもなく、問題も明るみに出ないと思っています。 ②は「手すりのない」ということで、本来であれば設置すべき手すりを設置していない状況で発生した事故であり、労災申請すると安全対策不備がバレるので申請しない。 ③も「安全カバーのない」ということで、②同様申請しない、というもの。 本人が、「これくらいの怪我」は全然大丈夫です。病院にさえいければ大丈夫です、言っているから問題ないだろうというケースかと思いますが、ここに大きな問題が潜んでいます! どういうパターンで労災が明るみになるのか ①病院側で不自然であることが判明。問診中に仕事でケガと言ってしまうというケース。 本人が病院に行き、ドクターからの問診中に、ついつい 「敷地内でフォークリフト乗車中に衝突したと言ってしまった」「手すりのない」「安全カバーのない」とキーワードを言ってしまい、私傷病や個人的な怪我ではなく業務が原因であることが判明する。 ②本人や家族や知人からの申し出 本人が会社との打ち合わせでは大丈夫と言っていたが、本人が家族や知人に状況を詳細に話したところ、 「それって労災じゃないの?」「労災の方が補償が手厚いって聞いたことあるけど?」「会社に騙されているんじゃないの?」「あなたが大丈夫と言ってもやっぱり事実通りにしないといけないんじゃない?」「あなたの話を聞いて、私が監督署に相談してくる」等々。。。 本人は職場に迷惑をかけてはいけないから黙っておこうと思っていたのに、そこまで周囲に言われたらだんだん腹が立ってきた。監督署へ相談しに行こう、あるいは周囲の方々から情報が監督署に持ち込まれるケース。 ②のケースは実はよくあります。。。。 特に②の場合はこの後も続きます。 監督署としては労災隠しの疑いがあるとわかると敏感に反応する傾向があります。 要は、労災を隠すような会社は悪い会社であり、労災事故だけではなく、長時間労働や未払賃金等の問題も隠されている可能性を感じる、ということで「調査」に動くケースも多い、というのを実感しています。 この流れで調査が来た場合、タイムカードや賃金台帳等、企業側としてはあまり見られたくない資料の提供を余儀なくされ、労災隠しから残業代精算、といったことも多々ありますのでご注意ください。 労災ってそもそも何? 労災とは 労働者が業務に起因する病気や通勤途中の怪我などで被る災害のこと。 業務規模や雇用形態は問わず、労災と認定されれば労災保険が適用され、休業補償や遺族補償が受けられる制度のこと。 労災ではなくプライベートでの怪我や個人的な体調不良等で働けない場合に健康保険側から支給される傷病手当金の補償よりも労災保険側からの補償の方が、補償される期間も長く、金額も高くなることがあります。 本人側としては上記のように補償面でメリットのある労災扱いが良いですが、 会社側としては、労災申請ばかりしていると労災保険料が上がったり、取引先などに対するイメージの悪化や、労働基準監督署の調査といったデメリットを考え、可能であれば労災扱いは逃れたい、ということで、申請しないケースも見受けられるようです。 職場でコロナクラスターが発生した場合 まず厚生労働省ホームページでは次のようなQ&Aがあります。 Q:感染した労働者は労災給付の対象となるか A:業務に起因したと認められれば対象となる。症状が継続し療養や休業が必要な場合も対象 Q:感染経路が判明しない場合はどう判断するか A:①2人以上の感染者がいる ②小売業の販売やタクシー運転業務など、顧客と接触機会が多い 等々 私の考えでは、職場内で同時期に2人以上の陽性者が出て、陽性者が同じ空間で仕事をしていたという心あたりがある場合は、職場が原因である、と考え、労災申請をとりあえず行う、というのが対応方法の王道ではないか、と思っています。 会社としては事実を隠さず、労災申請さえしていれば、その後調査官が来社され、時間を取られることも多いですが、会社としての対応義務を果たしていることとなり、それで労災が認められるのであれば、陽性になった方々への申し訳も多少つくのではと思います。 少し乱暴な言い方をすると、労災申請自体は無料、認定されるか否かは監督署が決めることなので、認定されない場合は労災ではないので会社側も後ろめたいことなく、その後の事業活動が通常通りできる、という考え方もありではないかと思います。 その点、在宅勤務やワーケーション等、他の社員と同じ空間で勤務することのない勤務形態は、コロナ労災が発生しない勤務形態である、ということもできるのではないか、と思う面もあり、これから年末年始を迎えるにあたり、まだまだ柔軟な勤務形態に対応できていない企業様としては、考えていくべき時期・内容なのかも、と思い、記載させていただきました。 下村 勝光(しもむら かつみつ) MIRACREATION株式会社 取締役。社会保険労務士法人MIRACREATION 代表社員。 仕事を通じて「笑いと驚き」を提供したい!をコンセプトに、北浜にある大阪証券取引所ビル8Fを本拠地としつつ、日々テレワーク中。 「難しいことをおもしろくして」をモットーに、現場に即した具体的なアドバイスを受けられると経営者から人気を博しております。 生まれは茨城県、育ちは大阪。趣味はフルマラソンで何とか3時間28分台を目指しております。 関連記事 >ワクチン未接種の従業員の転勤や配置転換は検討すべき?~コロナ禍からの正常化に向けた労務管理~ >本当にできてる?今一度検討したい柔軟な働き方~テレワーク・移住公務員・ワーケーション~ >【2022年から実務上影響大?】育児休業の法律改正について >今だから知っておきたい!従業員のワクチン接種状況管理、賞与情報、新たな助成金情報について CO-MITでは、様々な目的から全国で研修・合宿施設の検索が行えます。 >研修合宿施設検索サイト「CO-MIT(コミット)」で施設検索する! また、ご希望の研修合宿を一括手配する「専門家に相談」サービスもご用意しております。 ホテルや研修センターをはじめ、全国のさまざまな施設と緊密に連携。研修や合宿の目的・日時・参加人数などを踏まえ、プロの視点から最適な施設および備品等の選定・提案・手配を進めます。 ぜひお気軽にご利用ください。 > 専門家に相談する! 記事一覧へ
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