2022年7月に義務化される制度「男女間賃金格差に係る情報の開示」と物価高騰時代における賃金等の状況 2022.6.30 モチベーションUP 人事・総務向け 労務管理 生産性UP パン、コーヒー、ハンバーガー等、連日身近な食べ物の値段が上がるニュースが続いています。私としては、生まれて初めての経験かもしれません。 また、為替相場も超短期間で円安となり、従業員を海外駐在させている企業様から、物価と為替変動への対応について相談が増えている状況です。 加えて、コロナもそろそろ解決に向かっている中、これまでストップしていた外国人労働者の受け入れを検討し始めている企業様からの相談も増えており、世の中の変化と共に企業も動いていることを実感できる日々を送っております。 今回は、時代の動きに合わせ、人事総務担当者が知っておくべき賃金や賞与、そして2022年7月から新たに始まるルールについてお伝えしたいと思います。 目次 2022年度新入社員の初任給 賃上げの状況について 2022年夏季賞与の平均額 「女性活躍・男女共同参画の重点方針2022」の「男女間賃金格差に係る情報の開示」について まとめ 2022年度新入社員の初任給 一気に月額10万円程度アップし応募者が増えている企業のニュースを始め、新聞紙上で初任給アップの情報が多々出ていますが、労務行政研究所の「2022年度 新入社員の初任給調査」の情報を共有します。 全学歴で引き上げという企業が41.8%と、過去10年間でもっとも高い率。 その結果、全産業で見た学歴別の初任給水準は以下のようになっています。 高校卒(事務・技術)一律 175,234円(前年比+2,676円) 短大卒(事務) 187,044円(前年比+1,940円) 大学卒(事務・技術)一律 216,637円(前年比+2,574円) 大学院卒修士 234,239円(前年比+2,139円) 出典:労務行政研究所 「2022年度 新入社員の初任給調査」より https://www.rosei.or.jp/attach/labo/research/pdf/000082927.pdf 大卒の初任給が21万円台後半となっています。あくまでも上場企業・大手企業の調査結果ではありますが、新卒採用において初任給は重要ですので、中小企業ではかなり厳しい状況だと思います。 ただ最近では、新卒初任給が上がってきている中、これだけお金を出すなら新卒ではなく中途採用に切り替え、少々年齢が高くても即戦力がいいでは、という企業様の声を聞くことが増えてきています。 その背景には、価値観が多様な新卒世代を育成する時間がない、育成する自信がない、新卒で採用しても5-10年くらいで辞めるでしょ、といった気持ちが働いていることを感じています。 賃上げの状況について 大手企業 経団連「2022年春季労使交渉・大手企業業種別回答状況」の内容を取り上げます。なお、本調査は従業員数500人以上、主要21業種大手252社を対象に、集計可能な81社の結果。 これによれば、2022年(令和4年)の賃上げの総平均は7,430円で、昨年実績の5,544円と比較すると+1,886円の大幅増。 業種別では製造業が7,578円(前年実績5,762円)、非製造業が6,735円(前年実績4,504円)という結果となっています。 出典:日本経済団体連合会 「2022年春季労使交渉・大手企業業種別回答状況(第1回集計)」より https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/051.pdf 中小企業 経団連「2022年春季労使交渉・中小企業業種別回答状況」の内容を取り上げます。なお、本調査は従業員数500人未満の17業種754社を対象に、集計可能な249社の結果。 これによれば今春の中小企業の賃上げの総平均は5,219円(1.97%)となり、昨年実績である4,444円と比較すると、775円のプラスとなっています。業種別では、製造業で5,434円(2.03%)、非製造業で4,791円(1.85%)という結果となっています。 出典:日本経済団体連合会 「2022年春季労使交渉・大手企業業種別回答状況(第1回集計)」より https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/058.pdf 2022年夏季賞与の平均額 経団連が2022年6月21日に公表した「2022年夏季賞与・一時金 大手企業業種別妥結状況(第1回集計)」の内容を取り上げます。 なお、本調査は従業員数500人以上、主要21業種大手253社を対象に、賞与妥結平均額が明らかになっている20業種105社の結果。 これによれば、2022年夏季賞与の妥結額平均は、前年比+13.81%の929,259円となっています。なお、製造業の平均は+15.11%の930,475円、非製造業の平均は+6.99%の922,512円となっており、特に製造業での回復が目立っています。 出典:日本経済団体連合会 「2022年夏季賞与・一時金 大手企業業種別妥結状況(加重平均)」より https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/065.pdf 「女性活躍・男女共同参画の重点方針2022」の「男女間賃金格差に係る情報の開示」について 2022年6月3日に決定された「女性活躍・男女共同参画の重点方針2022(女性版骨太の方針2022)」の中の、「男女間賃金格差に係る情報の開示」について、2022年7月から義務化された新たなルールがスタートすることとなります。 制度のポイント ①情報開示は、連結ベースではなく企業単体ごとに求める。ホールディングス(持株会社)も、当該企業について開示を行う。 ②男女の賃金の差異は、全労働者について、絶対額(支給金額)ではなく、男性の賃金に対する女性の賃金の割合で開示を求めることとする。加えて、同様の割合を正規・非正規雇用に分けて、開示を求める。 ※現在の開示項目として、女性労働者の割合等について、企業の判断で、更に細かい雇用管理区分(正規雇用を更に正社員と勤務地限定社員に分ける等)で開示している場合があるが、男女の賃金の割合について、当該区分についても開示することは当然、可能とする。 ③男女の賃金の差異の開示に際し、説明を追記したい企業のために、説明欄を設ける。 ④対象事業主は、常時雇用する労働者 301人以上の事業主とする。101人~300人の事業主については、その施行後の状況等を踏まえ、検討を行う。 ⑤金融商品取引法に基づく有価証券報告書の記載事項にも、女性活躍推進法に基づく開示の記載と同様のものを開示するよう求める。 ⑥本年夏に、制度(省令)改正を実施し、施行する。初回の開示は、他の情報開示項目とあわせて、本年7月の施行後に締まる事業年度の実績を開示する。 ⑦国・地方公共団体についても同様に女性活躍推進法に基づく開示を行う。【内閣府、金融庁、厚生労働省、全府省】 2022年7月に制度は施行され、その後の事業年度にあわせて開示が求められることになります。 ⑧開示を求める区分:「全労働者 / 正規雇用労働者 / 非正規雇用労働者」を必須とする。 ⑨今回、男女の賃金の差異の情報公表について、本年7月に施行することとされているが、初回の適用(公表)について、対象企業が実施できるスケジュールとなるよう、必要な措置を講ずる、ということ。 ※事業年度が4月~翌3月の場合は、令和4年4月~令和5年3月分を令和5年4月以降に開示。 事業年度が7月~翌6月の場合は、令和4年7月~令和5年6月分を令和5年7月以降に開示。 ⑩計算方法は、次の通りとする。なお、男女で計算方法を異なるものとしてはならない。 賃金台帳を基に、正規雇用労働者、非正規雇用労働者、全労働者について、それぞれ、男女別に、直近事業年度の賃金総額を計算し、人員数で除して平均年間賃金を算出する。その上で、女性の平均年間賃金を男性の平均年間賃金で除して100を乗じたもの(パーセント)を、男女の賃金の差異とする。 ⑪企業による任意の追加的な情報公表の例 ・自社における男女間賃金格差の背景事情。例えば、女性活躍推進の観点から、女性の新卒採用を強化した結果、前年と比べて相対的に賃金水準の低い女性労働者が増加し、男女賃金格差が前事業年度よりも拡大した、といった事情がある場合には、その旨を追加情報として公表する。 ・男女の労働者について、属性(勤続年数、役職等)を同じくする者の間での賃金の差異を追加情報として公表する。 ・有期・パート労働者を多数雇用している企業においては、 (1)有期・パート労働者の契約期間・労働時間を正社員の契約期間・労働時間に換算する (2)正社員、有期・パート労働者それぞれの賃金を1時間当たりの額に換算する 等の方法により男女の賃金の差異を算出し、追加情報として公表する。 7月施行ですので、今後、短期間での動きが予想されますが、事業主による初回の情報公表が円滑に実施されるようにするため、給与計算ソフトウェア提供業者、HRテック業者等への情報提供等を速やかに開始するとされています。 まとめ 日本の賃金はここ30年、ほぼ上がっていないと言われています。また、OECDの統計によると、男女間の賃金格差は、欧米諸国が10%台であるのに対し、韓国がワースト1位の34.6%、次いで日本が2位で24.5%とこの2国が突出している、と言われています。 世界標準に合わせていないと、日本の価値が相対的に下がり、円安がますます進むことになりかねません。うまく自社サービスの価格をアップさせ、賃上げや男女間格差是正に対する原資を確保せざる追えない時代に突入していると思います。 下村 勝光(しもむら かつみつ) MIRACREATION株式会社 取締役。社会保険労務士法人MIRACREATION 代表社員。 仕事を通じて「笑いと驚き」を提供したい!をコンセプトに、北浜にある大阪証券取引所ビル8Fを本拠地としつつ、日々テレワーク中。 「難しいことをおもしろくして」をモットーに、現場に即した具体的なアドバイスを受けられると経営者から人気を博しております。 生まれは茨城県、育ちは大阪。趣味はフルマラソンで何とか3時間28分台を目指しております。 関連記事 >新入社員や第二新卒などの若手の採用に向けて!採用力、定着力につながる人事制度の例 >ジョブ型採用制度への興味調査や大学生の意識調査から見る、近年の新卒社員の定着について >【2022年度は二刀流世代!?】昨年度新入社員の入社後の傾向から考える、今年度の新入社員へ教育すべきポイント CO-MITでは、様々な目的から全国で研修・合宿施設の検索が行えます。 >研修合宿施設検索サイト「CO-MIT(コミット)」で施設検索する! また、ご希望の研修合宿を一括手配する「専門家に相談」サービスもご用意しております。 ホテルや研修センターをはじめ、全国のさまざまな施設と緊密に連携。研修や合宿の目的・日時・参加人数などを踏まえ、プロの視点から最適な施設および備品等の選定・提案・手配を進めます。 ぜひお気軽にご利用ください。 > 専門家に相談する! 記事一覧へ
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