【2024年10月から】社会保険の適用範囲拡大になるルール改正!対象者と対応ポイント 2023.12.25 人事・総務向け 労務管理 失敗しない 計画・準備 2023年も終わり、いよいよ2024年もスタートですね。 2023年の漢字は「税」で、インボイス制度の導入を始め、1月からスタートする新NISA制度での所得税非課税の問題等、確かに言われてみれば「税」が印象的な一年だったかと思わされました。 2024年は「税」に関連する変更もさることながら、4月からは建設業や運送業のドライバー、医師といった働き方改革で5年間の猶予期間が適用になっていた部分が無くなりますので、全国的に働き方を改めて見直すタイミングになろうかと思います。 今回は働き方改革関連だけでなく2024年10月からは社会保険の適用範囲がさらに拡大する、というルール改正がありますので、その点について改めてお伝えしたいと思います。 目次 「社会保険に関する現在の基本的なルール」 労働時間が週20時間以上となった方への対応ポイント ルール改正で影響が出ると予想されること 社会保険料を減らす方法はないのか? まとめ 「社会保険に関する現在の基本的なルール」 現行法上、短時間労働者(正社員の4分の3未満の所定労働時間)を社会保険に加入させる義務が強制的に適用される「特定適用事業所」は、短時間労働者を除く被保険者の総数が常時100人を超える(101人以上の)事業所とされています。 2024年10月1日以降は、短時間労働者を除く被保険者の総数が常時50人を超える(51人以上の)事業所が特定適用事業所とされ、その範囲が大幅に拡大されます。 ただし、たとえ従業員数51人以上の企業で働いていたとしても、本人の働き方が加入要件を満たしていない場合は、社会保険の適用外となりますのでお間違えなく。 ちなみに、加入要件としては以下の基準となります。 ・正規従業員(フルタイム) ・所定労働日数が正規従業員の4分の3以上のパート・アルバイト これが2024年10月以降は、従業員数51人以上の企業で働く従業員のうち、下記の4つの条件をすべて満たす人が対象になります ・週の所定労働時間が週20時間以上(あくまで所定の労働時間が週20時間以上なので、残業時間は含めない) ・月額賃金が8.8万円以上(基本給及び諸手当。通勤手当、残業代、賞与は含めない) ・継続して2か月を超える雇用の見込みがある ・学生ではない(休学中や夜間学生は加入対象となる) ここでポイントとなるのは、所定の労働時間=あらかじめ決まっている労働時間が1週間で20時間であり、残業時間は含まない点だと考えています。 この点に関しては国からも次のようなQ &Aが出ており、考え方が明示されています。 Q)就業規則や雇用契約書等で定められた所定労働時間が週20時間未満である者が、業務の都合等により恒常的に実際の労働時間が週20時間以上となった場合は、どのように取り扱うのか。 ↓ A)実際の労働時間が連続する2ヶ月において週20時間以上となった場合で、引き続き同様の状態が続いているまたは続くことが見込まれる場合は、実際の労働時間が週20時間以上となった月の3ヶ月目の初日に被保険者の資格を取得します。 とあります。 上記のような考え方は、皆様の会社にも一度は来たことがあるかもしれない社会保険事務所の現地調査でもよくチェックされる点となります。調査の目的は簡単に言いますと、社会保険料の徴収漏れがないか、という点で色々と確認が入り、特に頻繁に見られるのが正社員以外の方々の労働時間をチェックし、概ね月80時間後半以降の方、それが2ヶ月連続している場合に、帳簿に付箋を貼られ、付箋を貼られる度にドキドキさせられる、という場面に遭遇します。(苦笑) 参考:日本年金機構 https://www.nenkin.go.jp/ 労働時間が週20時間以上となった方への対応ポイント 対応方法としては、2ヶ月連続で目安時間をオーバーする方には会社側から社会保険に加入するか、翌月には労働時間を減らすのか、どちらにするかということとなり、調査後に対象者がどのようになったのか(社会保険加入もしくは労働時間が減ったのか)を報告することが一般的となります。 この点、難しい調整になると思いますが、2ヶ月連続ではなく、隔月でオーバーする、しない、を繰り返すようなシフトで運用できればかなりの高確率で指摘されることは無い、と実務を通じて感じてはおりますので、2ヶ月をひとくくりにしたパート・アルバイトさんの労務管理を考えてはいかがでしょうか。 ルール改正で影響が出ると予想されること ちなみにこの改正により、以下のような影響がある、と思います。 1.保険料の負担増: 従業員と企業双方における保険料の負担が増加します。企業は財務予算の見直しを含めた対策が必要になる場合があります。追加の保険料負担を考慮し、財務予算の増加分を他の経費削減でカバーできないのか、様々な角度から検討していく必要があろうかと思います。 2.福利厚生の改善: これは少し無理やり感があるかもしれませんが、従業員が社会保険に加入する、ということは後ほど触れているようなメリットがありますので、福利厚生の向上である、と捉えることができるかもしれません。 改正内容を従業員に適切に伝え、理解を深めるための教育や説明会を実施し、会社も保険料を負担していますので、せっかくなら単に本人の保険料負担が新たに発生するだけだ、と捉えられないように、社会保険の仕組みや加入のメリットをしっかりと伝え、どうせなら保険加入の意義を広めることが大事だと感じます。 次に、社会保険への加入メリットを紹介します。 1.高齢時の安定した収入: 年金はどうせ出ないのでは、将来的にもらえる金額が掛け金より低くなると思うから加入したくない、という声も多いですが、年金制度への加入は、将来の安定した収入源を確保する上でやはり重要です。現役時代に積み立てた年金は、退職後の生活の大きな支えとなります。強制的に支払うこととなる保険料は、考え方を変えれば、計画的に老後資金を準備できることとなりますのでやはりメリットだと考えたいところです。 2.休職中の所得補償: 病気や怪我で仕事を休む必要がある場合、社会保険による給付金(傷病手当金)が支給されるため、安心して休養に専念できます。被扶養者期間しか無い場合は傷病手当金は支給されません。個人的にはこれが一番大きなメリットかも、と思っています。 社会保険料を減らす方法はないのか? あと、何とか社会保険料を削減できないのか、裏技はないのか、という相談を受けることがあります。 社会保険料の削減方法を考える際には、法律の範囲内で効果的な対策を講じることが重要だと思います。 以下に2点挙げてみます。 1.従業員の構成を見直す: 採用難がますます進む中、週20時間を下回る超短時間のパートタイムやアルバイトの従業員を適切に活用することで、社会保険料の支払い対象者数を減らすことができます。ただし、これは労働者の権利や労働市場の状況を考慮する必要がありますが、最近では短時間の副業対応者の活用も増え、不足する労働力のパズルをいかに組み合わせていくのか、といった感覚で考えていく必要があろうかと思います。 2.労働者派遣や外部委託の活用: 一部の業務を外部に委託することで、社会保険料の支払い義務がある従業員数を減らすことができます。ただし、派遣さんは社会保険料という点では効果はありますが、そもそもの派遣料金が高い、ということが問題になることが多々ありますので、トータル人件費も考えると、いかにうまく外部委託・アウトソーシングを活用するのか、ということをさらに検討すべきかと考えています。 まとめ すでに10月から変更内容を把握されている企業様も多いとは思いますが、さらに数年後、20時間ではなく週10時間、もしくはそれ以上のルールが待ち受けていると私は思っています。 実は、厚生労働省は、現行の雇用保険加入要件の一つである週20時間以上から、2028年度までに週10時間以上とする方向で検討しています。 この週10時間以上、というフレーズはあまり見ず、初めて聞いた時は驚きましたが、おそらく雇用保険から週10時間というルールを入れることにより、次は社会保険でも週10時間、というルールが検討されていくに違いない、と思っています。 さらにその先には労働時間の時間数に関係なく、という世界もあるかもしれません。 そのような状況になった場合の企業運営を今からでも色々と試験的に試していくことで、いざという時に速やかに対応できますので、何かご参考になればと幸いです。 下村 勝光(しもむら かつみつ) MIRACREATION株式会社 取締役。社会保険労務士法人MIRACREATION 代表社員。 仕事を通じて「笑いと驚き」を提供したい!をコンセプトに、北浜にある大阪証券取引所ビル8Fを本拠地としつつ、日々テレワーク中。 「難しいことをおもしろくして」をモットーに、現場に即した具体的なアドバイスを受けられると経営者から人気を博しております。 生まれは茨城県、育ちは大阪。趣味はフルマラソンで何とか3時間28分台を目指しております。 関連記事 >【2024年4月法改正】裁量労働制の見直しに伴う新たなルール >【評価は個人や組織を促進する重要なツール?】改めて押さえておくべき育成や研修、評価について >【2023年3月から義務化】人的資本の開示についての対象企業の動きや具体的な開示内容を知る CO-MITでは、様々な目的から全国で研修・合宿施設の検索が行えます。 >研修合宿施設検索サイト「CO-MIT(コミット)」で施設検索する! また、ご希望の研修合宿を一括手配する「専門家に相談」サービスもご用意しております。 ホテルや研修センターをはじめ、全国のさまざまな施設と緊密に連携。研修や合宿の目的・日時・参加人数などを踏まえ、プロの視点から最適な施設および備品等の選定・提案・手配を進めます。 ぜひお気軽にご利用ください。 > 専門家に相談する! 記事一覧へ
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