【2023年3月から義務化】人的資本の開示についての対象企業の動きや具体的な開示内容を知る

2023.5.18

【2023年3月から義務化】人的資本の開示についての対象企業の動きや具体的な開示内容を知る
ゴールデンウィーク明けからコロナが5類扱いとなり、いよいよ日本国内からコロナ特別対応がなくなり、経済正常化に向けスタートした、といった感じがしていますね。
アメリカの著名投資家が地政学リスクから考えても、今後の日本には期待できる、といったニュアンスの情報が発信されていますので、良い波に乗っていければと私も感じております。

さて今月は、上場企業で求められようとしている人的資本の開示について、ポイントをお伝えしたいと思います!

人的資本の開示とは

人的資本とは、人材を企業の「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出す考え方のことです。従業員の知識や能力を企業価値の源泉とみなして、それらを高め、伸ばすための教育に企業が継続的に投資をすること、またそのための戦略を策定・実施することを人的資本経営と呼んでいます。

つまり、人的資本の情報開示とは、自社の人材が持つ能力(人的資本)にまつわる情報をさまざまなデータや指標を用いて示すことです。

出典:人的資本の情報開示はいつから?対象企業や開示項目をわかりやすく解説|ミライイ
https://www.hrpro.co.jp/miraii/post-1598/

人的資本の開示する義務対象企業の動き

弊社のご支援先(上場企業)でも、どのような情報を開示すべきか、初めてのことになるので、色々と他社情報をかき集めたり、書籍を購入されながら、色々と検討されているところです。
スタート時期としては2023年3月期決算以降の決算から、上場企業は人的資本情報の開示が義務化されることとなりますので、そろそろ世の中に出回り始めることとなりますので、その内容をかき集めてイメージを作っていく企業様が多いだろうと思っています。

人的資本の開示する義務のある項目は法的には決められていませんが、2018年12月からスタートした、「ISO30414」という企業や組織における人的資本の情報開示に特化した初の国際規格が定めている測定項目の11項目を開示する企業が増えてくるだろう、といった段階で、これからどんどん開示されていく中で、企業ごとに特色のある開示項目が出てくるものと思われます。

今のところはこの30414の項目のうち、開示しやすいものから順番に開示に向けた情報の整理や言語化を進めていく、ということになり、会社独自で考えて開示したとしても、その内容が30414のどの項目に当たるかなー、といった感じで、照らし合わせながら整理していくことがスタンダードかな、と思っています。
ちなみに、お伝えしてきた30414の測定指標は次の11となります。

1 .コンプライアンス・従業員倫理
規律やコンプライアンスに対する測定指標

2 .人件費
人材の調達や雇用に際して発生するコストを測定する指標

3 .多様性(ダイバーシティ)
従業員やリーダー層以上の多様性・構成を測定する指標

4 .リーダーシップ
部下から見た、マネジメントに対する信頼度を測定する指標

5 .組織文化
従業員のエンゲージメントや満足度を測定する指標

6 .従業員の健康・幸福度
労災の実態等を測定する指標

7 .生産性
人的資本への投資対効果・アウトカムを測定する指標

8 .採用・異動・配置・離職
採用から離職までのHRMの一連のプロセスについて測定する指標

9 .スキル・能力
人的資本のスキル・能力の向上に要するコスト等を測定する指標

10.サクセッションプランニング
重要ポジションに対する後継者計画の推進度合いを測定する指標

11.利用可能な労働力
非正規人材を含めた従業員数等の指標

上記11の項目は義務項目ではなく、参考情報として捉えておけば結構かと思います。
実際の上場企業における人的資本の開示とは、従業員や経営陣に関する情報を株主や投資家に公開することを指しています。人的資本は企業価値に大きな影響を与えると捉えられる傾向が強くなっているので、投資家はその情報を評価や投資判断の材料として活用したい、その情報を踏まえて投資をし、成果を出したい、という流れです。

人的資本の情報開示で開示される具体的な内容

具体的には、以下のような情報が開示されることが一般的だと思われます。

1. 従業員数: 企業の規模や成長の指標として従業員数が開示されます。

2. 年齢構成や性別比率: 労働力の多様性や働きやすい環境を示す指標として、従業員の年齢構成や性別比率が開示されます。将来性のある人員構成になっているのか、を示すことになります。

3. 教育・研修: 企業が従業員に対して提供している教育や研修プログラム、およびそれに関する投資額が開示されます。費用対効果という言葉があるように、多額だから良い、という訳ではありませんが指標として教育・研修に投資する額が多いほど従業員の能力アップがなされ、企業業績の向上が期待できるだろうと判断されると思います。

4. 技術・スキル: 企業が持っている技術やスキルセットが開示されます。

5. 従業員の満足度: 従業員の働きやすさや企業へのロイヤルティを示す指標として、従業員の満足度、特に最近ではエンゲージメント指数も開示されます。

6. 離職率: 労働力の維持・育成に関する指標として、離職率が開示されます。

7. 経営陣の経歴: 経営陣のスキルや経験が企業の業績に影響するため、経営陣の経歴が開示されます。

人的資本を開示することによって、企業の持続的な成長や競争力の向上に役立つと思います。見られるのって大事ですよね。
また、投資家に対してより詳細な情報を提供することで、より適切な投資判断が可能となるはずですので、ますます重要性が高まることは間違いありません。

中小企業の人的資本の開示について

中小企業における人的資本の開示も、株式上場はしていないものの、上場企業と同様の項目を整理し、最近の採用難時代を乗り越えていくためにもホームページや求人情報に提示できるように準備しておくことで、他者との差別化や課題・問題の整理ができることにより、効率的な人的資本の向上を目指していくことができるものと考えております。また、開示のために整理していくことで、
長期スパンに渡った人材の育成について考えて実行することに繋がり、その結果、後継者の育成すなわち30414で言うところのサクセッション・プランニングが向上していくものと思われます。
情報開示の範囲や方法はその規模や業種により異なると思いますが、以下のような情報が開示されることが多いと言われています。

1. 従業員数: 企業の規模や成長の指標として従業員数が開示されます。

2. 従業員のスキルや資格: 中小企業では特定のスキルや資格を持つ従業員が企業の競争力を左右することがあります。そのため、従業員のスキルや資格に関する情報が開示されます。

3. 教育・研修: 企業が従業員に対して提供している教育や研修プログラムの情報が開示されます。

4. 経営陣の経歴: 経営陣のスキルや経験が企業の業績に影響するため、経営陣の経歴が開示されます。

5. 離職率: 労働力の維持・育成に関する指標として、離職率が開示されます。

また、中小企業では、特に経営者自身が人的資本の大部分を占めることが多いです。そのため、経営者のビジョンや戦略、経営スキルなどについて開示することが重要となります。
特に、経営者のマンパワーに依存しすぎている状態だと、万が一経営者が働けなくなった場合、一気に業績が悪化していくはずですので、依存度合いを認識した上で、依存度を下げていくためにNo.2や管理職の育成・権限委譲を進めていく必要があろうかと思います。
この点、上場企業は中小企業と比較すると経営者1人に対しての依存度は一般的には低いと思いますので羨ましい限りです。

人的資本の開示は、中小企業においても、企業の競争力を高め、金融機関や取引先からの信頼を得るために重要な活動となるだろうと思っています。

人材育成分野でやるべきこと

人材育成分野でやるべきことを整理しておきたいと思います。
30414で、特にリーダーシップ、スキル・能力の情報を開示するのにおいて次のことが必要になってくると思っています。

・リーダーシップの指標を向上させるためには、管理職とは何か、についての管理職研修の実施による管理職力のアップと部下から上司に対しての評価=360度評価による多面評価の仕組づくりが大事だと思います。
管理職研修は実施されているケースも多いですが、360度評価はほぼ導入されていないと思いますので今後増えてくるものと思われます。

・スキル・能力の指標を向上させるためには、会社が求める人材像を明確にすることでゴールを設定し、現状分析を行うことで、求める姿と現状とのギャップを社内で視えるようにする。
そのギャップを埋めるために必要となる教育・研修のカリキュラム選定とスケジュールを設定して実施する。やりっぱなしではなく、実施した後に効果の検証を行い、さらに不足しているカリキュラム選定へ、といったPCDAを回すことが大事だと思います。

以上となります。
人的資本、と言うなかなか抽象的なものを開示するために言語化することに不慣れな日本ではありますが、そのうちチャットGPT(有料版)が何とかしてくれることに期待しているところです。

下村 勝光(しもむら かつみつ)
MIRACREATION株式会社 取締役。社会保険労務士法人MIRACREATION 代表社員。
仕事を通じて「笑いと驚き」を提供したい!をコンセプトに、北浜にある大阪証券取引所ビル8Fを本拠地としつつ、日々テレワーク中。
「難しいことをおもしろくして」をモットーに、現場に即した具体的なアドバイスを受けられると経営者から人気を博しております。
生まれは茨城県、育ちは大阪。趣味はフルマラソンで何とか3時間28分台を目指しております。

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