【2023年】押さえておきたい労務管理!人への投資が鍵?厚生労働省予算概算要求における重点ポイントをチェック他

2023.1.26

【2023年】押さえておきたい労務管理!人への投資が鍵?厚生労働省予算概算要求における重点ポイントをチェック他
みなさん、こんにちは。早いもので、ロシアがウクライナに侵攻して1年が経過しようとしています。
これ以上長引くのか、それともそろそろ節目を迎えるのか。またそれ以外の動きが出てくるのか。本当に予想できない状況ですが、なんだかんだと平和に過ごせている我が国日本です。
せっかく平和に過ごせているのであれば、その有り難さを常に意識しながら、これまで取り組んでいなかった社内変革等に積極的に取り組んでいただきたいものです。

今回は、そのためにも知っておいてもらいたい3点についてお伝えしていきます。

障害者雇用について

採用難が今後ますます続くことが想定される中、多様な人材を受け入れることができる体制作りが求められてきます。
企業様の中には、障害者雇用がうまく進んでいないケースも多いのが実情だと思いますが、従業員が一定数以上の企業は、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を法定雇用率にする義務があります。この法定雇用率は、労働者に対する対象障害者である労働者の割合を基準とし、少なくとも5年毎に、その割合の推移を勘案して設定することとされています。現行の雇用率は、2018年4月からの雇用率として設定されており、2023年度からの雇用率を設定することになっています。

ちなみに、令和5年度からの新たな障害者雇用率は2.7%。現在の2.3%から0.4ポイントアップするこの上げ幅は、障害者雇用率の導入以来、最大幅のアップとなっており、国の障害者雇用に対する本気度が伺えます。ただし、雇入れに係る計画的な対応が可能となるよう、令和5年度においては2.3%で据え置き、令和6年度から2.5%、令和8年度から2.7%と段階的に引き上げることとなります。
なお、先の臨時国会で成立した障害者雇用促進法に基づき、2024年4月から、雇入れに必要な一連の雇用管理に対する相談援助の助成金が創設される予定であり、あわせて、特に短い労働時間(週10~20時間)で働く重度の身体障害者・知的障害者や精神障害者の実雇用率への算定が可能となるとされています。

障害者を受け入れることができる体制づくりの過程の中で、これまでの業務フローややり方を改善すべき点が必ず出てくるものと思います。その改善点をクリアすることによって、障害者だけでなく、それ以外の既存社員にもメリットになること出てくるものと思われますので、まずは障害者雇用を実施してみる、ということが社内変革のきっかけになると考えます。
是非まだ0名の企業様はご検討されてみてはいかがでしょうか。

中小企業の賃金水準の目安が新たに更新されました!

物価高や転職エージェントの普及などにより、労働者の賃金に対する感度が高くなっており、世間相場を意識した賃金水準確保の重要性が高まっています。ユニクロをはじめ、大手企業が連日のように賃金アップに踏み切る、という情報が入ってきていますので、中小企業においても人材確保や定着率向上に向け、賃金アップを考えざる負えない時期が来ていると思っています。
その際、賃金の比較情報として、実務上よく用いられるのが、東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情」です。その令和4年版が公開されました。これは、都内中小企業(従業員数10~299人)における賃金等の実態を調査しているもので、今年は「退職金」についても調査されています。
今回の調査結果のポイントは以下となっています。

1. 所定時間内賃金は363,904円、所定時間外賃金は32,453円
2. 過去1年間の賞与は937,327円
3. モデル退職金(定年時)は高校卒9,940,000円、大学卒10,918,000円
4. 再雇用制度における最長雇用年齢を70歳以上としている企業の割合は28.3%

退職金については、中期的に減少傾向が続いていましたが、高卒と高専・短大卒は遂に1,000万円を割り込んでいます。この調査の詳細は参考リンクをご覧ください。

出典 中小企業の賃金・退職金事情|東京都産業労働局
https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/toukei/koyou/chingin/r4/

賃金アップは国策になりつつあります。簡単にはできないと思いますが、参考情報を使いながら適度は着地点を見つけてもらえれば幸いです。

令和5年度厚生労働省予算概算要求における重点ポイントを知る

厚生労働省が次の大義名分の元、予算要求を行なっており、その項目を知ることにより、2023年度に重点的に取り組まれる労務管理対応の傾向をいち早く知ることができると思いますのでご紹介いたします。

コロナ禍からの経済社会活動の回復を見据え、国民の命・雇用・暮らしを守る万全の対応を行うとともに、全世代型社会保障の構築を推進し、未来を切り拓く「新しい資本主義」を実現することにより、国民一人ひとりが豊かさを実感できる社会を構築するため、以下を柱に重点的な要求を行う、と表現されています。
主に3つの切り口となっています。

(1)コロナ禍からの経済社会活動の回復を支える保健・医療・介護の構築
(2)成長と分配の好循環に向けた「人への投資」
(3)安心できる暮らしと包摂社会の実現

このうち、労務管理の観点で注目しておくべき(2)について触れていきたいと思います。

人への投資パッケージ、円滑な労働移動の推進等

新しい資本主義の実現に向け、2024年度までの3年間に4,000億円規模の予算を投入する施策パッケージを講じ、「人への投資」の抜本的強化を図り、デジタル分野等の人材育成、社会全体で学び直しを促進するための環境を整備するとともに、成長分野への円滑な労働移動が可能となるよう支援する。と表明されています。リスキリング、DX化、といったこれまで継続的に強調されていた部分に対する改めての投資、といったイメージです。

人への投資パッケージ

最も予算額が大きい部分となり、全部で7項目あります。

(1)人材開発支援助成金による企業におけるデジタル人材等の育成の推進
(2)キャリアアップ助成金による正社員化の推進
(3)専門実践教育訓練給付の充実及び支援の拡充
(4)受講者の特性に対応した新たな教育訓練手法のコンテスト方式による選定、開発・試行
(5)学び直しを後押しするキャリアコンサルティング機能を拡充したキャリア形成・学び直し支援センター(仮称)の整備
(6)産業雇用安定助成金による在籍型出向を活用したスキルアップ支援の新設
(7)特定求職者雇用開発助成金による成長分野への労働移動の円滑化支援等

多様な働き方を個々の希望に合わせ選択し、活躍可能な環境の整備を行う

多様な働き方への支援、最低賃金・賃金の引上げに向けた事業者への支援、労働者・フリーランスの働く環境の整備等誰もが働きやすい社会の実現に向けた働き方改革を着実に実行するため、個々の希望に応じた多様な働き方の選択とその活躍が可能な環境の整備を行う。

多様な働き方の実現

(1)良質なテレワークの導入・定着促進
(2)「多様な正社員」制度にかかる導入支援等の実施
(3)男性が育児休業を取得しやすい環境の整備や、円滑な介護休業の取得・復帰に向けた企業の取組等に対する支援
(4)労働者協同組合についてのNPO等からの円滑な移行

(3)については、あの中国でもついに約60年ぶりに人口が減少している、とニュースを聞き驚いているところですが、日本は本当に深刻な出生率低下、人口減少の傾向が世界的に見ても進んでいますので、出産育児一時金の金額アップだけでなく、男性の育休参加をすすめ、本当に国をあげて取り組んでいくべき項目だと感じています。
みなさんの企業内でも育児をしやすい環境を構築してもらいたいものです。

働き方改革の推進、ハラスメント対策

(1)時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務への労働時間短縮等に向けた支援
(2)働き方改革推進支援センターによる働き方改革に関する相談支援
(3)ワーク・ライフ・バランスを促進する休暇制度・就業形態の普及
(4)働く人のワークエンゲージメントの向上に向けた支援
(5)職場におけるハラスメント(就活ハラスメント、カスタマーハラスメントを含む)撲滅のための事例収集、周知・啓発、相談支援等

特に(1)に関して、助成金が新設される予定で、この助成金は結構使えそうな感じがしていますので私も研究を深め、労働時間短縮に向けた取り組みに苦戦しやすい建設・自動車運転・医療・砂糖製造業(鹿児島・沖縄)の企業様に向け、うまくご提案できればと考えています!該当される企業様はぜひウォッチしておいてください!

働き方改革推進支援助成金(適用猶予業種等対応コース)が新設!2023年4月スタート予定

○令和6年4月には上限規制の猶予事業・業務への適用が予定されているところであるが、これらの業種等については、特に建設業など一部の業種において顕著な長時間労働の実態が認められるなど更なる支援が必要である。
○各業種・業務について法規制が異なることから、各々の業種において成果目標を設ける。

という趣旨で導入されます。

具体的には、建設事業、自動車運転の業務、医業に従事する医師、砂糖製造業(鹿児島県、沖縄県)については、成果目標を設けて令和5年度は適用猶予業種等対応コースが新設される予定となっています。

【助成対象】

・就業規則等の作成・変更費用
・研修費用(業務研修を含む)
・外部専門家によるコンサルティング費用
・労務管理用機器等の導入・更新費用
・労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新費用
・人材確保等のための費用等
・労働時間短縮や生産性向上に向けた取組に必要な経費

【助成率】

3/4(事業規模30名以下かつ労働能率の増進に資する設備・機器等の経費が30万円を超える場合は、4/5)

【成果目標について】

①36協定の特別条項における上限時間の設定見直し(例えば、月80H超→月60H以下へ)
②週休2日制の導入(4週4休から4週8休まで)
③勤務間インターバル導入(9時間以上や11時間以上の設定)
上記①②③について、建設・自動車運転・医業・砂糖製造ごとに、助成金対象となる数値設定が異なっています。

上記助成金だけでなく、今回の概算要求に関する助成金等の詳細にご興味がおありの企業様は詳細をご確認ください。
ちなみに「働き方改革推進支援助成金(適用猶予業種等対応コース)」はP95に記載されております。

出典 令和5年度厚生労働省予算概算要求の主要事項|成長と分配の好循環に向けた「人への投資」|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/23syokan/dl/01-07.pdf

今回の3点を踏まえ、是非とも社内変革に取り組んでいただき、元気な日本を皆さんと共に作っていければと思います。弊社でも賃金アップは実現したいと考えております!

下村 勝光(しもむら かつみつ)
MIRACREATION株式会社 取締役。社会保険労務士法人MIRACREATION 代表社員。
仕事を通じて「笑いと驚き」を提供したい!をコンセプトに、北浜にある大阪証券取引所ビル8Fを本拠地としつつ、日々テレワーク中。
「難しいことをおもしろくして」をモットーに、現場に即した具体的なアドバイスを受けられると経営者から人気を博しております。
生まれは茨城県、育ちは大阪。趣味はフルマラソンで何とか3時間28分台を目指しております。

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