形ばかりの人的資本経営からの脱却!人事労務担当者の7月繁忙期の先にある重要ポイント

2024.6.17

形ばかりの人的資本経営からの脱却!人事労務担当者の7月繁忙期の先にある重要ポイント
みなさんこんにちは!
6月からスタートした定額減税への対応も山場を超え、ホッと一息ついておられるご担当者も多いのではないでしょうか。
7月に入ると算定基礎届や障害者・高齢者雇用に関する報告書提出、労働保険の申告等、人事労務担当者にとっては毎年の恒例となる繁忙期に突入し、まだまだ気の抜けない方々も多いかと思います。
その中で、今回は人材の教育・育成等につながる5つの論点でお伝えし、7月の繁忙期を超えた先に待ち構えている次なる課題に向けてのヒントになれば幸いです。

階層別教育:組織の成長を支える鍵

現代の企業において、階層別教育は組織の成長と発展に不可欠です。新入社員から経営層まで、各階層に適した教育プログラムを提供することで、社員一人ひとりの能力を最大限に引き出すことができます。

例えば、新入社員には基本的な業務スキルや企業文化の理解を深めるための研修が重要です。一方、中間管理職にはリーダーシップやチームマネジメントのスキルを強化するための研修が求められます。経営層には戦略的思考や経営判断力を高めるためのプログラムが不可欠です。
こうした階層別教育は、社員の成長を促進し、組織全体のパフォーマンスを向上させる効果があります。

あと、中間管理職や経営層に、改めて新入社員に発信する教育内容(例えば、基本的な挨拶や名刺交換等々)を復習してもらうことで、これまでの職業経験の中で培ってきた「自分流」を改めて見直してもらい、さらに良くなってもらう、という教育内容も非常に好評です。
ただし、うまく趣旨・目的を伝えないと、今さらなぜ自分たちが基本的な内容を学ぶのだ、忙しいのに、と不平不満が出てくる可能性もありますので、キーマンへの根回し等、慎重に準備をしてもらうことが大事だと思います。

人的資本経営:人材を資産と捉える新しい視点

人的資本経営は、従来の経営手法とは一線を画す新しいアプローチです。人材を単なる労働力としてではなく、企業の最も重要な資産として捉えることが、この概念の核心です。
企業は、社員一人ひとりのスキルや知識、経験を活用し、組織の競争力を高めるために投資を行います。具体的には、教育研修の充実、キャリアパスの明確化、適切な評価制度の導入などが含まれます。
このような人的資本経営により、社員のモチベーションが向上し、企業の持続的な成長が可能となります。

元々は、企業の競争力の源泉は人材だという認識のもと、上場企業に対して、財務諸表に載らない人的資本に関する情報の開示を求める機運が世界的に高まってきていた中、米国の証券取引委員会(SEC)は2021年に公表した年次規制アジェンダにおいて、「社員や取締役の多様性」を含む人的資本に関する開示を重要なテーマとして挙げられ、日本でも2021年に改訂されたコーポレートガバナンス・コードにおいて、人的資本に関する記述が追加されました。

こうした人的資本情報の開示が進むのは有意義である一方、人的資本経営を目指す取り組みが単なる情報開示だけにとどまってしまうことも危惧されています。離職率や女性管理職比率などの情報を開示する動きは増えてきましたが、「個々の人材の強みを最大限に活かす」という視点での取り組みはまだ足りていないように思います。
必要なのは、個々の価値を引き出し、活かすことにつながる具体的な施策であると思います。
形ばかりの「人的資本経営」からの脱却を図っていきましょう!

従業員体験価値:社員の満足度とパフォーマンス向上

従業員体験価値(Employee Experience Value)は、社員が企業での仕事をどのように感じ、どれだけ満足しているかを評価する概念です。
高い従業員体験価値を実現するためには、物理的な職場環境の整備、柔軟な働き方の導入、健康管理プログラムの充実などが求められます。さらに、オープンなコミュニケーション文化や、社員の意見を尊重する企業風土も重要です。
こうした取り組みにより、社員のエンゲージメントが向上し、結果的に企業の生産性やパフォーマンスも向上します。

最近では、採用力や人材の定着に向けて、自社に入社するとこのような体験を積むことができますよ、と給与だけではない仕事を通じたインセンティブをいかに表現していくかが大事である、と言われています。
仕事の報酬は更なる面白い仕事、自分の将来につながる仕事、というように、有益な体験価値を積んでいくことができる会社であることをいかに伝えていくことができるのか。

人事労務担当者は、社内での業務内容を体験価値、という言葉に置き換えて、新たな価値を作ることが求められています。
大変だとは思いますが、その構築プロセスを通じて、改めて自身の仕事の価値を考えるきっかけにもできますのでぜひおすすめしています。

リスキリング:未来の仕事に備えるための再教育

テクノロジーの進化や市場の変化に対応するために、リスキリングが不可欠だと言われだし、最近特に国を挙げて叫ばれ出していると感じています。
ちなみに、リスキリングとは、既存の社員が新しいスキルや知識を習得し、変化する業務環境に適応するための再教育のことを指します。

特にデジタル技術の進展に伴い、多くの企業がリスキリングプログラムを導入しています。
例えば、デジタルマーケティングやデータ分析、プログラミングスキルの習得が求められる場面が増えています。
リスキリングにより、社員は自信を持って新しい役割を担い、企業は競争力を維持することができます。

また、デジタル分野は今後リスキリング、というよりも、日本人全員の必修科目的な位置付けになるはずですので、
デジタル分野にさらにプラスして、何を学んで身につけるのか、ということを考えていくべきだと思います。
死ぬまで学びですね。

百聞は一見にしかず:実践を通じた学びの重要性

「百聞は一見にしかず」ということわざは、実際に経験することの重要性を説いています。
特に企業の人事戦略においては、実践を通じた学びが不可欠です。社員が理論だけでなく、実際の業務やプロジェクトを通じてスキルを磨くことが、真の成長につながります。

例えば、OJT(On-the-Job Training)や実務研修、現場での実践的なトレーニングが効果的です。こうした実践的な学びは、社員が自身の役割をより深く理解し、即戦力として活躍するための重要な要素です。
上記のリスキリングについて、単なるお勉強レベルではなく、実践レベルで学ぶことが大事。

そういう点では、学生の留学ではありませんが、社会人の留職、という観点での兼業をさらに推進していくことが、人材不足の世の中での労働力不足を補うことにもつながりますので、国をあげて取り組みを加速させてもらいたいものだと考えています。

まとめ

企業の成長と発展を支えるためには、階層別教育、人材を資産と捉える人的資本経営、未来の仕事に備えるリスキリング、従業員体験価値の向上、そして実践を通じた学びの重要性を理解し、適切に実行することが求められます。
これらの論点を踏まえた戦略的な人事施策が、企業の競争力を高め、持続的な成長を可能にする鍵となるでしょう。
そのためにも、人事労務担当者として、社内で一番色々な経験値を高め、時には失敗もあると思いますが、その失敗談すらも社内の皆さんにとっての生きた教科書だと思われるネタになると思いますので、実践あるのみ、で7月の繁忙期以降はトライしまくってもらいたいものです!

下村 勝光(しもむら かつみつ)
MIRACREATION株式会社 取締役。社会保険労務士法人MIRACREATION 代表社員。
仕事を通じて「笑いと驚き」を提供したい!をコンセプトに、北浜にある大阪証券取引所ビル8Fを本拠地としつつ、日々テレワーク中。
「難しいことをおもしろくして」をモットーに、現場に即した具体的なアドバイスを受けられると経営者から人気を博しております。
生まれは茨城県、育ちは大阪。趣味はフルマラソンで何とか3時間28分台を目指しております。

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