【2020年4月から必須事項】未払残業代の消滅時効が延長! 研修参加の管理監督者の深夜割増は?

2020.2.20

【2020年4月から必須事項】未払残業代の消滅時効が延長! 研修参加の管理監督者の深夜割増は?

本格化する働き方改革

働き方改革も2020年4月から、注目の大企業への同一労働同一賃金制度がスタートされたり、大企業はスタート済みの36協定上限規制が中小企業にも適用され、いよいよ本格的な取り組みが必要となってくるタイミングとなりました。
そもそも働き方改革とは、人口減少=労働力人口減少に伴い、一人一人の生産性を向上させることや、これまで労働力として見込めていなかった方々を労働力として参画させ、日本全体の生産性を向上させることが狙いです。

にも関わらず、生産性を○%向上させる必要がある、といった法的な規制はできませんので、どうしても労働時間や休日といった、規制をかけることができる点から取り組まざる負えないのが現実なので、労務管理上の規制ばかりが目立っている状況ですが、本来取り組むべき「生産性向上」は常に意識しておいてもらいたいものです。

また、2020年4月には民法も改正されます。民法制定から100年以上が経ち、社会経済の変化に伴って取引形態も多様化・複雑化したことから、現行民法では対応できない事態が多々生じるようになっており、ようやく改正法がスタートされるようですが注意が必要です。

民法改正による労務管理上での2つの影響

1つ目は、入社時に雇用契約書を取り交わす時に出てくる身元保証書です。
わかりやすく言いますと、従業員が社内で問題を起こした時に、身元保証人が損害賠償する金額の上限金額を明記する義務が発生する、という点です。4月1日以降入社の新卒社員・中途社員と取り交わす身元保証書から上限金額記載が義務となりますので、まだ未整備の企業様は身元保証書のメンテナンスを行っておいてください。

2つ目が企業経営上、かなりインパクトのある未払残業代の時効が3年間となり、将来的には5年間になる、というルールがスタートすることです。

これまでは皆様もご承知のとおり、未払残業代の時効は2年間でした。
2年間でも一人当たり数百万円を精算する、といった事件も多々ありますが、時効が3年、5年、と延長すると単純比較はできないものの、おそらく1.5〜2.5倍ほどの精算金額となる事件も今後出てくる、ということが予測されます。

社会保険労務士である私がご支援している中小企業の傾向としては、働き方改革が叫ばれはじめ、それまで一般従業員に対してあまり残業代を払っていなかった企業様でも未払残業代を減らしていこうという動きが盛んになっているように感じます。
従業員個人の労務管理に関する情報収集力の向上により、対応せざる負えない、という状況や、深刻な人手不足において定着力や採用力の向上を考えても対応せざるを得ない、といったところだと思われます。
違法状態が改善されることは良いのですが、ここで一点気になるのが、一般従業員への対応は進みつつありますが、管理監督者としている従業員が本当に管理監督者なのか、つまり名ばかり管理職問題についてです。

管理監督者となると会社の中で固定給は高い設定になっているハズです。
名ばかり管理職状態の管理監督者が未払残業代を請求してくると、残業単価は高いし、それまで残業代は一円も払っていないので、一から全て払い直す、しかも時効が3年ともなると、莫大な金額になることが予測されます。

弁護士や外部ユニオンといった、従業員本人の代理人として企業側に未払賃金請求を行い、精算金額の○%を手数料として請求する立場からすると、2020年4月以降、請求金額が高額になりやすい管理監督者の未払残業代請求が増えてくるのでは、心配しています。

改めて知っておくべき労働基準法でいうところの「管理監督者」とは

労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者とされており、この場合は、労働時間・休憩・休日の規定は適用されませんので、残業代の支払いは必要ありません。ただし深夜勤務については規定が除外されていませんので、午後10時から翌朝5時まで働いた場合には、深夜勤務手当の支払いが必要となります。

管理監督者であるかどうかは、以下の点を総合的にみて判断されます。

 (1) 重要な職務と権限が与えられていること(裁量権や決済権があること)
(2) 出退勤について管理を受けないこと(役員のように自由出退勤)
(3) 賃金面で、その地位に相応しい待遇がなされていること (時間単価を算出した時に、一般従業員よりも高い状態)

つまり、経営方針・労働条件・採用の決定に関与していて、経営者と一体的な立場にあることが求められます。
また人事考課を行ったり、遅刻や欠勤の承認など労務管理上の指揮権限があるかどうかも、管理監督者の判断要素となります。

今一度、(1)(2)(3)の観点で自社の管理監督者が労働基準法で言う管理監督者に当てはまっているのか、については確認いただきたいところです。

管理職研修時における注意点

4月から新しい年度を迎えるため、4月からの年間計画を立案する集中的な研修をこの時期に実施する企業様も多い時期ではないでしょうか。特に、年間の事業計画や部門方針等、大事な内容を決める研修となると、課長や部門長、部長等、といった管理監督者が参加されることも多くなるハズ。

これまで記載してきた内容からすると、午後10時から翌朝5時までの時間帯に計画立案作業等を行なっている管理職に対しては、深夜労働の申請を行うようアナウンスしその都度精算しておくべきかと思います。
ちなみに、深夜労働の割増金額は、本人の給与から算出した1時間あたり時給金額に0.25を乗じた金額((例)時給3000円換算の場合 750円/時間)となり、通常の残業代よりは当然1時間あたりの金額が少額となります。
意外と少ない金額で済むかも、と思われる経営者の方も多いです。

会社としては、○○さんは管理監督者扱いだから普段は残業代を支給していないが、深夜時間帯は労働基準法に基づいて割増賃金を支払っている、という状態を作っておくことで、会社側の考えをより強く主張できる状態になります。

また、管理監督者側としても、自分は管理監督者であり普段は残業代は出ていないものの、深夜時間帯は割増賃金をもらっているので、少々不満はあるものの仕方ないか〜、といった気持ちも芽生えてくるのではと思います。

管理監督者問題は、この気持ちが実は大事なポイントです。
というのも、労働基準監督署の調査が入った時に、まずは一般従業員の残業時間の確認とその時間に見合った残業代が正しい単価で支給されているか、がチェックされ、管理監督者の残業問題は監督署の調査レベルでは、会社ごとに状況が違うのであまり深く追求されないのが実情です。
したがって、管理監督者の不満が募り、監督署やその他の第三者に相談に行く、という行為がなければあまり表面化されない点となりますので、まずは深夜割増くらいはお支払いしておくべきで、それすら無いとなると法律的にも違法であり、感情的にも良くない状況を作り出していることになると思います。

最後に

働き方改革で生産性向上が叫ばれていますので、管理監督者もなんとか22:00〜5:00の時間帯に仕事をしなくても良いよう、工夫改善、無駄の排除、スピードアップ、レベルアップをしていく必要があろうかと思います。

そのためにも社内研修や学びの場、自己研鑽が必要となってくる訳で、研修に必要となる金額を経費と考えるのか、未来への投資と考えるのか。真の働き方改革には、ある程度の投資が必要かもしれません。

下村 勝光(しもむら かつみつ)
MIRACREATION株式会社 取締役。社会保険労務士法人MIRACREATION 代表社員。
仕事を通じて「笑いと驚き」を提供したい!をコンセプトに、北浜にある大阪証券取引所ビル8Fを本拠地としつつ、日々テレワーク中。
「難しいことをおもしろくして」をモットーに、現場に即した具体的なアドバイスを受けられると経営者から人気を博しております。
生まれは茨城県、育ちは大阪。趣味はフルマラソンで何とか3時間28分台を目指しております。

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