ジョブ型採用制度への興味調査や大学生の意識調査から見る、近年の新卒社員の定着について

2022.6.3

ジョブ型採用制度への興味調査や大学生の意識調査から見る、近年の新卒社員の定着について
5月のゴールデンウィークも過ぎ、すでに新卒社員の退職者が発生している企業様もあろうかと思います。せっかく入社してくれたにも関わらずすぐに退職されてしまうと、企業側としてはやはりショックですね。
企業側としては新卒社員・若手社員の意識や実態等を知ることで対策を考えていくしかないのではと思っているところです。
先日、コロナ感染も落ち着きつつある中で、リアルで仕事や授業を始めたところ、リアル疲れ、を起こしている若者が相当数いる、という新聞記事をみました。
なかには、コロナ禍で講義を2倍速で聞いていたために、リアルで先生の話を聞くとゆっくり過ぎてイライラする、という反応もあるようです。
実際に弊社内のメンバー(若手ではない)でも、最近研修を受講した際にオンラインで2倍速が当たり前になっているのでリアル参加の研修はしんどい、眠くなると言っていました。
社内で若手向けの研修を実施する際には、早口で話す(笑)のが良いかもしれません。先輩や上司からタラタラ講義をされると、口には出さないと思いますが、内心かなりのストレスを与えているかもしれない、と考え、研修の仕方にも工夫をしていく必要がありそうです。
また、最近の若い方々は、音楽の前奏が長いと飛ばして聴かないので、その傾向に合わせた曲づくりをされている音楽家も増えている、という話を聞いたことがあります。無駄なことはしたくない、効率を考えて生きていきたい。このような想いを持つこと自体は全然問題ないと考えていますが、なんだかギスギスしてきているなー、と感じている昭和世代な私でございます。
さて前回の記事は、新卒社員に関する意識調査の結果等を中心に、新感覚の二刀流タイプである新卒社員の考え方や転職意識等を踏まえ、効果的な教育内容を取りまとめてお伝えし、1日でも早く戦力となってもらうことを願って書きました。
今回も定着に向けて知っておいてもらいたい内容をお伝えできればと思います。

初任給の引き上げ状況について

近年、初任給の引き上げが続いていますが、まずは今春の初任給の引き上げ状況についてお伝えします。
なんだかんだと言ってもお金は大事な要素ですので、あまりにも金額に違いのある企業様は金額アップに向けて検討いただくことをお勧めいたします。

今回は労務行政研究所の「2022年度 新入社員の初任給調査」の結果を見ていきます。
なお、この調査は、旧東証1部上場企業2,130社のうち、回答のあった 201社(うち、東証プライム上場企業は165 社)を集計したものとなっています。

まず、初任給の改定状況ですが、全学歴で引き上げという企業が41.8%と、過去10年間でもっとも高い率となっています。

その結果、全産業で見た学歴別の初任給水準は以下のようになっています。

学歴別の初任給水準
高校卒(事務・技術)一律 175,234円(前年比+2,676円)
短大卒(事務) 187,044円(前年比+1,940円)
大学卒(事務・技術)一律 216,637円(前年比+2,574円)
大学院卒修士 234,239円(前年比+2,139円)

大卒の初任給が20万円と言われた時代は既に遠い過去となり、21万円台後半となっています。あくまでも大手企業の調査ではありますが、新卒採用において初任給は重要なファクターですので、中小企業ではかなり厳しい状況になっているのではないでしょうか。
あと、毎年10月に実施されている最低賃金のアップが待っております。今年も全国的に時給20円以上のアップ、すなわち月給で約3000円以上の底上げをすべき企業様の多々あろうかと思います。サービス価格にうまく乗せていかないと人件費が占める割合がどんどん上がり、企業経営的には本当に大変な状況になろうかと思います。

ジョブ型制度への関心度合い

最近、「ジョブ型」というキーワードを耳にすることが増えました。マスコミの報道などを見ていると、能力主義や成果主義の徹底をジョブ型と表記するなど、その仕組みに対する理解度の低さを感じることも多くありますが、このキーワードは学生の関心も高いようです。株式会社学情が、2024年3月卒業(修了)予定の大学生・大学院生を対象に実施したアンケートの結果を見てみたいと思います。

①ジョブ型採用に興味はありますか?
27.6% 興味がある
40.0% どちらかと言えば興味がある
24.7% どちらとも言えない
2.3% どちらかと言えば興味はない
5.4% 興味はない
②ジョブ型採用に興味を持っている理由
58.0% どんな仕事をするかが明確だから
42.3% 配属される部署が決まっているから
30.0% 学んだことやスキルを活かせるから
21.4% 今後増えていくと思うから
21.1% 専門性を身につけることができるから

このように、 「興味がある」と「どちらかと言えば興味がある」を合計すると、67.6%にも達し、学生のジョブ型に対する関心の高さを感じます。ただ、学生もジョブ型を単なる職種別採用といった感じで捉えている傾向があるように感じられる結果となっています。

わが国でジョブ型を本格的に推進するためには、企業がそうした人事制度を採用するというだけではなく、大学教育や各種労働慣行の見直しなども進める必要があり、むしろ学生にとっては厳しい世界となっていきます。しかし、今回の結果は、自らの専門性を高めるためには、メンバーシップ型としてそのキャリア形成を企業に委ねるのではなく、自らのキャリアに対して責任を持つ必要があると考えていると解釈することができるのではないでしょうか。
少なくともキャリアパスの明確化などの対策は進めておきたいものです。

大学生就職意識調査について

就職情報媒体大手の企業が1979年卒より毎年実施している「大学生就職意識調査」の最新結果を公表しました。この調査の対象は、2023年3月卒業見込みの全国大学3年生、大学院1年生(調査開始時点:現4年生)で、有効回答数は35,543名となっています。
今回はこの調査の中から、主要な項目について見ていきたいと思います。

就職観

「楽しく働きたい」が37.6%とトップ。
次いで22.7%の「個人の生活と仕事を両立させたい」、13.5%の「人のためになる仕事をしたい」。

企業を選択するポイント

ここ10年間、毎年、右肩上がりで上昇し、トップの回答となっているのが「安定している会社」で43.9%
以前、圧倒的1位であった「自分のやりたい仕事(職種)ができる会社」は、年々減少し、32.8%の2位。
3位は「給料の良い会社」で19.1%。これはここ10年じわじわと上昇している。一方、「働きがいのある会社」は年々低下。

安定性を感じるポイント

企業を選択するポイントの1位である安定性を感じるポイントとして挙げられている上位は以下の通り。

53.3% 福利厚生が充実している
46.6% 安心して働ける環境である
37.4% 売上高
36.0% 今後成長が見込まれる業界・企業である
35.5% 業界大手である
35.4% 離職率や平均勤続年数

行きたくない会社

トップは「ノルマのきつそうな会社」の37.4%。
ここ5年で急伸しているのは「転勤の多い会社」で26.6%。
かつて圧倒的1位であった「暗い雰囲気の会社(27.1%)」と来年にも逆転するのは確実。
その他、ここ10年で伸びているのは「給料の安い会社」「残業が多い会社」という回答です。

まとめ

今の学生(若手社員)は、仕事の内容よりも楽しさやワークライフバランス、安定性を重視している傾向が強くなっている、ということができるのではないでしょうか。
残業や転勤がなく、一方で給料や福利厚生がよい会社を希望すると言ってしまうと、「いまどきの若者は」という声が聞こえてきそうですが、彼らが育ってきたこの20年の環境を踏まえれば、そのような考えとなることもある程度仕方がないのではないかと思われます。人事担当者としては、こうした学生(若手社員)の気質の変化を理解し、対応していくことが望まれると思います。

あと、リアル疲れ・2倍速慣れ、を踏まえて、ある程度パターン化できそうな研修や入社オリエンテーション(入社手続き書類や就業規則類、社内ルールの説明)を、面白い画像等を入れ込んだ動画にあえて作成して提供するのもありかもしれません。作ってしまえば、そのあとは使い回しして、人事ご担当者も少しはラクをしても良いと思っています。

下村 勝光(しもむら かつみつ)
MIRACREATION株式会社 取締役。社会保険労務士法人MIRACREATION 代表社員。
仕事を通じて「笑いと驚き」を提供したい!をコンセプトに、北浜にある大阪証券取引所ビル8Fを本拠地としつつ、日々テレワーク中。
「難しいことをおもしろくして」をモットーに、現場に即した具体的なアドバイスを受けられると経営者から人気を博しております。
生まれは茨城県、育ちは大阪。趣味はフルマラソンで何とか3時間28分台を目指しております。

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