【職場におけるメンタルヘルス対策の具体例】企業が行うべきメンタルヘルス対策とは?

2023.8.17

【職場におけるメンタルヘルス対策の具体例】企業が行うべきメンタルヘルス対策とは?

今年の夏は本当に暑いですね。マラソンをしている私ですら、歩いているだけでも体調不良になりそうな暑さです。サウナの中を歩いている感じなので、熱中症にならないためにも、常にペットボトルを持ち歩いている次第です。皆様はいかがでしょうか。さて今回は、職場で本当に増えてきているメンタルヘルス罹患についてお伝えしたいと思います。

増えるメンタルヘルス罹患とその原因

皆さんの実感として、周囲にメンタル不調を訴えている人が多いように思いませんか?
実際の人数割合は、厚生労働省の労働安全衛生調査(2020年・実態調査)によりますと、過去1年間にメンタルヘルス不調を理由に連続1ヵ月以上休業した労働者又は退職した労働者がいた事業所割合は、平均で約9.2%のようです。
このうち、連続1か月以上休業した労働者がいた事業所の割合は7.8%、退職した労働者がいた事業所の割合は 3.7%となっているようです。

上記状況の中、2023年6月30日に厚生労働省は、令和4年度の「過労死等の労災補償状況」の結果を公表しました。毎年この時期に発表されますが、とても重要な情報だと思っていますのでご紹介させてもらいます。
「過労死等の労災補償状況」というのは言い換えると、過労死等になったのは会社の業務が原因である、と国が認めている件数ということになろうかと思っています。

具体的には、脳・心臓疾患、そして精神障害それぞれの請求件数と支給決定件数は以下のようになっています。

脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況

請求件数は803件で、前年度(令和3年度と4年度を比較して)比50件の増加。うち死亡件数は前年度比45件増の218件。
支給決定件数は194件で前年度比22件の増加。うち死亡件数は前年度比3件減の54件。

精神障害に関する事案の労災補償状況

請求件数は2,683件で前年度比337件の増加。うち未遂を含む自殺の件数は前年度比12件増の183 件。
支給決定件数は710件で前年度比81件の増加。うち未遂を含む自殺の件数は前年度比12件減の67件。

精神障害の出来事別決定及び支給決定の原因
上位7項目を取り上げてみました。

(1) 上司とのトラブルがあった
(2) 上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた
(3) 仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった
(4) 同僚等から暴行またはいじめ・嫌がらせを受けた
(5) 悲惨な事故や災害の体験、目撃をした
(6) 同僚とのトラブルがあった
(7) セクシュアルハラスメントを受けた

上記7項目が発生しないよう、職場環境を整えていく必要があります。どれも対策が簡単ではないものばかりではありますが、例えば(3)についての対応方法について考えてみたいと思います。

仕事内容・仕事量の変化によるメンタルヘルス罹患の例と対策

よくあるケースですが、社内メンバーが退職するものの人員補充がうまくなされずに、仕事を1人だけが引き継いでいる事はありませんか。どうしても仕事が出来る人に仕事が集まりがちとなり、その人の根性と努力で何とか引き継ぎ業務を受け止めてくれているという場合、ある日突然その方が体調不良を言い出してきたり、退職の申し出があったり、ということがありますね。

また、ジョブローテーションの一貫として人事異動をさせる場合、教育だから苦手なことでも我慢と根性で乗り切ろう、弱音を吐くのは甘い、という考えでそのまま放置しておくと、やはり体調不良等を言い出してくる、ということもあります。

いずれの場合も、やらせっぱなしではなく、上司や先輩、会社側から「引き継ぎ後」「異動後」1、2ヶ月くらいには状況を確認し、フォローしていく場を作っておくことが重要です。
特に採用難の時代ですので、一旦引き継いだものの後任者がなかなか入ってこず、いつまで経っても業務分散ができない状況が続くようだと、フォローの場も継続して構築し、意見交換や一旦引き継いでもらったものを再度他の誰かに渡す、ということを考えていくべきだと思います。
社内で上記のような状況になっている方の有無をご確認いただければと思います。

「参考:令和5年6月30日 厚生労働省HP 精神障害の労災補償状況」
https://www.mhlw.go.jp/content/11402000/001113802.pdf

ストレスを最小限に!職場におけるメンタルヘルス対策

その他、仕事上でのストレスや負荷は避けられない部分がありますが、その影響を最小限に抑えるためにも、会社として情報発信や対策をしておくことが大事です。

「職場におけるメンタルヘルス対策」について次のようにまとめてみました。

1. ストレスマネジメント

本人の趣味や嗜好がありますので、絶対にこれ!というものは言い切れませんが、適切な休息、健康的な食事、適度な運動などを行うことが大事だと思いますし、全員にその旨を伝え続けることです。メジャーリーガーの大谷選手は疲労回復のために、適切な休息(特に睡眠)にこだわっているらしく、
睡眠時間を確保することを最優先に、食事や移動をしている、という話も聞いています。私の場合、普段は6時間くらいの睡眠ですが、7時間睡眠できた日は確かに体が軽いように思います。

2. メンタルヘルスの教育

従業員がメンタルヘルスの問題を理解し、それを認識するための教育が必要です。これにより、自分自身や他の人が問題に直面している時に早期に対処することができると思います。メンタル不調になるのは気持ちが弱いからだ、という昭和的な考え方は令和時代では通用しません。相互理解・多様性の受け入れ、という観点が大事だと実感しています。フルタイムが難しい人には時短といった柔軟な働き方とそのことに対する周囲の理解も大事なポイントです。

3. 開放的なコミュニケーション

開かれた会話と対話を奨励し、従業員がメンタルヘルスの問題について話す安全な場を提供することは不可欠です。従業員が自分の感情や問題を共有することを恐れずに感じるようにすることで、問題が深刻化する前に対処することができると思います。陰気な雰囲気、組織風土は改善すべきですね。
特に最近では「心理的安全性」と言われる観点の職場づくりが重要視されていて、個々が自分の意見やアイデアを自由に表現できる、恐れやリスクなしに働ける状態を指します。このような職場環境は、メンタルヘルス対策だけではなく、生産性、創造性を高め、組織全体に良い結果をもたらすと言われています。

4. リソースの提供

従業員に対してメンタルヘルスサポート(カウンセリング、セラピーなど)へのアクセスを提供します。これは、社内のリソース、または第三者の専門家を通じて行うことができます。私が対応しているご支援先に聞いてみますと、確かに相談窓口は設置しているもののあまり活用されていない、と言われるケースが多いように思います。
相談すること自体が恥ずかしい、相談するまでもない、相談したことが周囲に知られると気まずい、といったところかと思いますが、今後は相談することは悪くない、相談しながら仕事をする、というケースがスタンダードになれば、かなりメンタルヘルス問題は軽減できるのではないか、と思っています。
人に話を聞いてもらうだけでも気持ちがスッキリした、自分の悩みを知ってくれている方がいて、その内容が絶対に漏れない仕組みになっているという安心感があり、信頼できる相談相手である、という状態をいかに作るか。
相談窓口に1年に1回は必ず相談することをルールにしてしまう会社があってもいいのでは、と思っています。

まとめ

チャットGPTに相談メールすれば、欲しい内容を速やかに入手して生産性が格段に上がる時代に、相談窓口に電話で相談して、自分の心に欲しい言葉を入手して、メンタルケアを全社員が当たり前のように実施する。デジタルとアナログの相談相手を誰もが持ちながら仕事をする、という世の中が来るのでは、と思っています。
自分の相談傾向を掴んでいい答えを返してくれる生成AI搭載の相談ロボが開発され、もうすぐリリースされるに違いない、と期待している私です。

下村 勝光(しもむら かつみつ)
MIRACREATION株式会社 取締役。社会保険労務士法人MIRACREATION 代表社員。
仕事を通じて「笑いと驚き」を提供したい!をコンセプトに、北浜にある大阪証券取引所ビル8Fを本拠地としつつ、日々テレワーク中。
「難しいことをおもしろくして」をモットーに、現場に即した具体的なアドバイスを受けられると経営者から人気を博しております。
生まれは茨城県、育ちは大阪。趣味はフルマラソンで何とか3時間28分台を目指しております。

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