カスハラ対応研修で従業員を守る|人事・研修担当者向け研修設計ガイド

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カスハラ対応研修で従業員を守る|人事・研修担当者向け研修設計ガイド

こんにちは。世界的な有事が発生し、今後も想定外の事態が日本を覆うかもしれません。予期せぬ攻撃を受ける場合は心身ともにダメージも大きいもので、いかに普段からリスクを想定した対応をしておくのかが何事にも重要だと改めて実感しているところです。

 

今回は、東京都産業労働局から令和7年10月に実施した実態調査が令和8年3月に公表された内容を踏まえ、東京だけでなく全国の企業様が従業員を守るための対策を事前に考えるべきポイントをお伝えしたいと思います。

カスハラの深刻な実態について

令和7年(2025年)4月1日、「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」が施行されました。これを受け東京都産業労働局が令和7年10月に実施した実態調査(令和8年3月公表、企業アンケート4,727件・従業員アンケート3,817件有効回収)によると、過去1年間にカスタマーハラスメント(以下「カスハラ」)に関する従業員からの相談を受けた企業は12.4%、相談はないが見聞きしたことがある企業を合わせると25.5%、と4社に1社となっています。

相談件数の傾向については「増加傾向にある」と回答した企業が18.9%、特に従業員1,000人以上の大規模企業では33.7%に達します。カスハラに該当すると判断した事案の内容は、「継続的・執拗な言動(頻繁なクレーム等)」が61.8%で最多であり、次いで「威圧的な言動(大声で責める等)」55.5%、「精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損等)」50.4%と続きます。行為者の81.3%は一般の顧客であり、被害の主な影響は「従業員の仕事への意欲・やりがいの低下」77.0%、「通常業務の遂行への悪影響」65.1%、「従業員の離職」15.5%と、人材定着・組織力に直結する問題であることが浮き彫りになっています。

一方で、カスハラ防止対策に「取り組んでいる」企業は全体の38.5%にとどまり、60.1%は未着手です。対策の中で最も実施率が高いのは「カスハラを受けた従業員が相談できる窓口の整備」65.7%であり、次いで「実態把握のための調査」52.9%、「カスハラを受けた従業員のケア」50.9%ですが、「教育・研修の実施」は47.8%にとどまっています。相談窓口や事後ケアは一定程度整備が進んでいるものの、研修による予防教育等は普及が遅れている状況が見受けられます。

研修による予防教育の三本柱

1.カスハラの定義と見分ける力の養成

研修の出発点は、カスハラと正当なクレームの境界線を従業員自身が判断できるようにすることです。東京都条例の定義を基軸に、具体的な事例を提示することが有効だと思います。たとえば「同一内容の苦情を繰り返し電話してくる顧客への対応」「SNSへの投稿をほのめかして要求を通そうとする行為」「土下座を強要する言動」など、現場で実際に起きやすいシチュエーションを題材とし、どこからがカスハラに該当するかを参加者全員で議論する時間を設けることが重要です。見分ける力を養うことで、従業員は不当な要求に対して組織対応の必要性を早期に認識でき、自身を守ることにもつながると思います。

2.初動対応と組織対応のプロセス習得

カスハラを受けた従業員が一人で問題を抱え込まないようにするためのプロセスを、ロールプレーを通じて体得させることが研修のポイントとなるのではと考えています。具体的には、上司への報告のタイミングと伝え方や、通話・面談の録音・記録の方法、さらに「対応できない場合がある旨を顧客に事前案内する」など、組織としての毅然とした姿勢の共有を研修を通じて行うことが大事です。

また、行為者に対する出入禁止や警察への相談など、より強い措置が必要となる局面の判断基準と指揮命令系統も研修内容に含め、ロールプレーで事前に経験しておくことと、いざというときの対応がしやすくなると思います。管理職向けには、部下から相談を受けた際の適切な初期対応や、組織対応フローの明示が不可欠だと思います。

3.被害従業員のケアと心理的安全性の確保

カスハラを受けた従業員が相談しやすい職場風土の形成は、管理職の重要な責務だと思います。研修においては、相談を受けた際の傾聴姿勢と初期対応、産業医・カウンセラーといった社内外リソースの活用法を具体的にお伝えする。さらに重要なのが、二次被害(相談者が「過剰反応だ」「自分にも落ち度がある」と周囲から批判される構造)の防止で、管理職はこの点を特に意識した対応が求められると思います。

研修効果を持続させるには、年1回の定期研修に加え、実際に発生した事案を題材とした振り返り、管理職向けケーススタディの組み合わせが有効であり、単発で終わらせない継続的な設計が不可欠だと思います。

研修施設における感染症対策と環境整備

カスハラ研修の実効性を高めるには、研修の場そのものの環境整備も不可欠である。特に対面形式のロールプレーや事例検討を実施する場合、研修施設における感染症対策は参加者の安全確保と研修への集中度の維持に直結すると考えます。

施設面では、研修室の収容定員を適切に設定したうえで、換気設備の稼働状況を事前に点検することが基本だと思います。座席配置については、ロールプレーの特性上、近距離での対話が生じる場面もあるため、飛沫感染リスクに配慮したパーティションの活用、共有物(テキスト・筆記用具等)の個別配布と使用前後の消毒を徹底する。また、体調不良者の参加を防ぐためのルール(発熱・咳等の症状がある場合はオンライン参加に切り替える等)を事前に全参加者へ周知し、参加者が参加を強行しなくて済む「キャンセルしやすい雰囲気」を組織として醸成することも重要です。

感染症対策と並行して、心理的安全性を担保できる空間づくりも研修効果に直結すると思います。カスハラ研修ではロールプレーで被害場面を再現することがあるため、参加者が安心して発言・体験できる「閉じた空間」の確保と、外部からの視線・音声の遮断に配慮した施設選定が求められます。オンラインとのハイブリッド研修をする場合、映像・音声のクオリティと通信回線の安定性確保が参加者の集中維持に欠かせません。ハイブリッド研修では、オンライン参加者がロールプレーの観察者として疎外感を覚えないよう、ファシリテーターによる積極的な巻き込みの工夫も必要だと思います。

まとめ

カスハラから従業員を守るための研修は、単なる知識の付与ではありません。会社が「従業員を守る」という意思を組織全体に示す行為にもなり、就業規則や基本方針とセットで機能する重要な事前準備です。前述の調査が示すとおり、カスハラ対策未着手の企業がいまだ6割を超える現状では、研修体制の整備そのものが競合との差別化要素となり、採用競争力・人材定着率の向上にも寄与すると思われます。従業員を守る会社です、という情報を社内外に発信ができているか、自社の状況をチェックしておきましょう。

人事・研修担当者は、データに基づいた現状認識を経営層と共有したうえで、研修内容の設計から、安全な施設環境の整備まで一体的に推進することが今まさに求められています。「カスハラを受けても仕方ない」という時代は終わりましたので、人事・研修部門の積極的な動きが今後ますます求められるものと考えて、準備を進めていきましょう。

参考:令和7年度 カスタマーハラスメントに関する実態調査 報告書|東京都産業労働局

https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/kaizen/ryoritsu/houkokusho_r7.pdf

下村 勝光(しもむら かつみつ)
MIRACREATION株式会社 取締役。社会保険労務士法人MIRACREATION 代表社員。
仕事を通じて「笑いと驚き」を提供したい!をコンセプトに、北浜にある大阪証券取引所ビル8Fを本拠地としつつ、日々テレワーク中。
「難しいことをおもしろくして」をモットーに、現場に即した具体的なアドバイスを受けられると経営者から人気を博しております。
生まれは茨城県、育ちは大阪。趣味はフルマラソンで何とか3時間28分台を目指しております。

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