【2026年10月施行】同一労働同一賃金ガイドライン改正による研修設計や施設手配等の実務

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【2026年10月施行】同一労働同一賃金ガイドライン改正による研修設計や施設手配等の実務
こんにちは。早いもので2026年も半分が終わり、後半戦に向けて、再度1年間で取り組むべき内容を整理し、軌道修正を図っていくタイミングかと思います。私も今年の年間目標で掲げている内容を毎月1日にチェックし、できている点、できていない点、全く着手できていないもの、あるいは、年初に設定したものの外部環境の変化によって不要になったものがあることに気づき軌道修正を図っている一人です。

10月から改正施行される同一労働同一賃金ガイドラインにより、これまでより一層非正規社員の処遇を上げていく必要が出てくる企業様も多くなると思いますが、その中でも教育研修に関する内容についてお伝えし、残り5ヶ月程度の軌道修正に役立てていただければと思います。

同一労働同一賃金とは
同一労働同一賃金の導入は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)との間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。

同一労働同一賃金が目指す働き方
同一企業内における正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差の解消の取組を通じて、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにします。

 

参考:同一労働同一賃金特集ページ|厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html

改正の法的な位置づけについて

不合理性判断の最重要キーワードは「説明が付くか」だと考えるとわかりやすいと思います。最高裁は待遇差は労働条件ごとに、その性質・目的に照らして判断するという枠組みを確立しました。今回の改正は新ルールの創設ではなく、大企業では2020年4月1日から、中小企業では2021年4月1日から本格的に同一労働同一賃金の考え方が適用されている中で、今日までの間で発表されてきた裁判所の考え方をガイドライン本体に書き込み、具体化・明確化したものと理解してもらえればと思います。

また、2026年10月の施行前である現時点でも、判例に反する制度は紛争で敗れるリスクがあり、10月以降求められる判断や対応はすでに始まっている、という認識で取り組んでいただきたいと思います。

研修企画担当者が押さえておくべきポイント

職務内容や責任範囲が共通する非正規を研修対象から機械的に除外する運用は、合理的な理由を示せなければ是正対象になります。

具体例としまして、コンプライアンス研修、ハラスメント防止研修、安全衛生研修、情報セキュリティ研修等、一般的に社員教育として実施している研修を「正社員のみ」で実施している場合、合理的な理由の準備が不可欠となります。最高裁判例(大阪医科薬科大学事件・最三小判令和2年10月13日、メトロコマース事件・同日)を踏まえ、改正ガイドラインは「正社員人材の確保や定着を図る」という目的だけでは不合理性が否定されるわけではないと明記してきました。(すなわち、それだけの目的だけでは不合理と判断される可能性が高くなってきました、という意味となります) 

よって、「これまで正社員のみとしてきた」という慣行は、もはや単独では理由にならないこととなります。また、研修設計の見直しポイントは5点あると考えています。

1. 受講対象者の棚卸し。
2.研修費用の負担(正社員は会社負担・非正規は自己負担という運用は均衡を欠く可能性が高くなります)。
3.研修時間中の賃金の取り扱い。
4.シフト調整・代替要員配置による受講機会の実質確保。
5.LMSアカウントを正社員限定とせず職務共通の非正規にも開放すること。

ちなみに、LMS(Learning Management System/学習管理システム)とは、企業や教育機関が学習活動を計画、実施、評価、管理するためのシステムのことです。 オンライン教材の配信や学習の進捗状況の確認、テストや評価の実施など、教育・研修業務を一元管理できる点が特徴です。

改正内容の中には、「職務の内容、成果、意欲、能力、経験等を公正に評価し昇給に反映することが望ましい」とあります。研修受講履歴・修了評価を昇給に連動させる設計は、公正評価の実現手段として望ましいと思います。

福利厚生施設・会場手配の実務ポイント

物品販売所・病院・診療所・浴場・理髪室・保育所・図書館・講堂・娯楽室・運動場・体育館・保養施設・駐車場等の施設利用について、非正規にも便宜供与を講ずるよう配慮しなければならないと明示されました。改正ガイドラインも、利用そのものに加え「料金・割引率等の利用条件」についても不合理な相違は認められないと記述を拡充されています。

その中で、会場手配のポイントは3点あると考えます。

1.自社の講堂・研修ルーム・体育館・保養施設を会場利用する場合、利用料・割引率・予約優先順位において正規・非正規で差を設けていないか。

2.外部研修会場手配時、参加者リストから非正規を除外する合理的理由があるか。

3.研修後の懇親会で社員食堂・保養施設を利用する場合の参加可否で差をつけていないか。なお、派遣先指針では「駐車場」が便宜供与の対象例として新たに追加されています。

説明義務の強化と紛争リスク

雇い入れ時に「待遇の相違について説明を求めることができる旨」の明示が義務化されます。したがって、実務的には労働条件通知署にその旨を記載し、可能であれば内容をわかりやすくまとめた資料を配布して説明できる体制まで整備しておくことをお勧めしております。

さらに改正ガイドラインは、事業主が説明義務を尽くさなかった場合や、非正規の意向を考慮せず一方的に待遇を決定した場合、これらが「相違の不合理性を基礎付ける事情」となり得ると新たに記載されました。説明の不十分さが、それ自体として裁判の敗因要素となる考え方となります。研修対象の選定根拠、施設利用条件の根拠を文書化し、求められた際に交付・閲覧できる体制が必須となります。

見落としがちな3つの盲点

1.是正は非正規の処遇引き上げで行うこと。正社員と非正規の差が問題になるなら、正社員の処遇を非正規レベルに下方修正したらいいのでは、と考えられる企業様もありますが、その発想はそもそも法律の趣旨とは異なりアウトとなりますし、正社員の研修機会・施設利用の引き下げによる是正は、改正ガイドラインで明確に否定されてきました。

2.定年後継続雇用の有期労働者であることだけで研修参加者の対象外とすることは問題となります。職務内容に応じた個別判断をする必要がある、ということなります。

3.無期フルタイム労働者(有期労働者から無期転換した者のこと)および「多様な正社員」(短時間や勤務地限定等の正社員)もガイドラインに沿って対応すべき対象者となります。特に、有期労働者から無期に転換する前に、不合理な相違は確実に解消することが求められることとなります。

最後に

施行は2026年10月1日ではあるものの、現時点でもガイドラインの考え方に基づいた実行が求められています。労働力不足時代であることを踏まえると、非正規社員から正社員登用を積極的に行えるルールづくりや、非正規社員の戦力化に向けた教育や仕組みづくりがますます求められていく時代に突入しています。

また、日本は今後インフレの世界へ突入しようとしています。最低賃金も10月にはさらにアップしていく中で、教育研修にかける費用は将来に向けた有益な投資として実益のあるものにしていかなければなりません。正社員と非正規社員との処遇待遇の差を考えることも大事ですが、そもそも現在実施されている教育研修は成果が出ているのか、そのあたりを根本的に見直し、意味のある教育研修を企画立案、実行に移すことを第一に考えるべきタイミングかもしれません。

参考:パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります(令和8年10月1日施行)|厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/001696534.pdf

下村 勝光(しもむら かつみつ)
MIRACREATION株式会社 取締役。社会保険労務士法人MIRACREATION 代表社員。
仕事を通じて「笑いと驚き」を提供したい!をコンセプトに、北浜にある大阪証券取引所ビル8Fを本拠地としつつ、日々テレワーク中。
「難しいことをおもしろくして」をモットーに、現場に即した具体的なアドバイスを受けられると経営者から人気を博しております。
生まれは茨城県、育ちは大阪。趣味はフルマラソンで何とか3時間28分台を目指しております。

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