知っておくべき”はたらくトレンドキーワード” 〜社労士の視点と教育研修企画への活かし方〜

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知っておくべき”はたらくトレンドキーワード” 〜社労士の視点と教育研修企画への活かし方〜
こんにちは。今年の3月に実施されたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の試合を見るためにはNetflixに申し込む必要がありました。我が家は試合を見るために申し込み、WBCが終わればすぐ解約しようと思っていましたが、普段あまりテレビや映画を見ない私にとって、Netflix上のコンテンツを見ているうちに、世界観や価値観が広がり、自己成長や発想が繋がっているかも、と思うようになり、今も契約を継続中です。

今回、パーソル総合研究所から発表された、2025年度下半期の「はたらく」に関する投稿データを分析した結果、特に投稿が増加している注目の上位3つのトレンドキーワードを知っていただき、社労士としての現場視点と、研修企画への活かし方もあわせてお伝えしますので、人事担当者として、新たな発想を持つきっかけになればと思います。

3位 無報酬で行われる労働「シャドウワーク」

経済活動を支えるために必要不可欠でありながら、無報酬で行われる労働を指します。介護現場のケアマネジャーが業務外で行う調整業務、DV被害者支援のシェルターでのボランティアなどが例として挙げられますが、職場でも「頼まれてもいないのに当然やる」業務は多く存在します。

社労士の現場から

労働時間管理の相談で良くあるのが、「業務の準備・後片付け」「顧客からの電話対応」「同僚のフォロー」など、タイムカードに記録されない時間の扱いです。これらは労基法上の「労働時間」に該当する可能性があります。また、私も忙しいのに誰もやらないから結局私ばかりがさせられている、といった不公平感を会社に訴えてきて、会社としてはどのようなバランスの取り方があるのか、について相談を受けることもあります。

シャドウワークが常態化している職場は、36協定の管理がいくら適切でも実態とかい離し、労基署からの是正勧告の対象になるケースが多いです。「見えない仕事を見える化する・評価する」ことが、法令遵守や組織健全化の両方につながると考えます。

人事担当者への示唆

研修テーマとして「業務の棚卸し」や「アンコンシャス・バイアス(無意識の期待)」を取り上げることで、シャドウワークを生む組織文化の問題に気づかせることができると考えます。特定の人に「見えない負担」が集中していないか、1on1や組織サーベイで定期的に確認する仕組みや発想も大事です。

2位 危機的状況でリスクの高いポジションに起用される「ガラスの崖」

「ガラスの天井(昇進できない見えない壁)」を突き破ったと思ったら、今度は崖っぷちに立たされる——そんな現象を指す言葉です。これは私も初めて聞いたワードでした。女性や少数派が管理職・経営幹部に登用されるのは、組織が危機や困難な局面にあるときに偏りがちで、失敗リスクの高いポジションを押しつけられやすいという実態を示します。女性首相の誕生という日本国内の象徴的出来事も重なり、一気に話題となっているようです。

社労士の現場から

就業規則や人事制度の設計支援をしていると、「女性管理職比率を上げよう」という方針だけが先走り、当事者へのサポートが後回しになっているケースを見かけます。火中の栗を拾わせて、うまくいかなければ「やっぱり女性には難しい」という評価に帰結してしまう——これがガラスの崖の実害です。女性活躍推進法に基づく行動計画策定においても、数値目標の達成だけでなく、登用後のフォロー体制(メンタリング・上位者による支援)まで設計することが求められます。

人事担当者への示唆

管理職登用研修の設計にあたっては、「誰を選ぶか」だけでなく「どんな状況で選んでいるか」を振り返ることが重要です。人不足や業績不振等の修羅場ポストへの女性抜擢が「単に女性活躍推進法の義務を果たすため」になっていないか、定期的に登用後のデータ(在任期間や成果(修羅場の改善度合い))で検証する仕組みを考えるべきだと思います。

1位 業績が好調でも人員削減を行う「黒字リストラ」

業績が好調にもかかわらず、将来の競争力維持や構造転換を目的として人員削減を行う動きが急増し、SNS上で最も急速に拡散したキーワードです。2025年の上場企業の早期・希望退職者は1万7,875人にのぼり、リーマンショック以降3番目の水準となっているようです。

社労士の現場から

社労士として就業規則の整備や労使トラブルの相談に携わっていると、「会社が儲かっているのに、なぜ辞めなければならないのか」という従業員側の声を耳にすることがあります。整理解雇の4要件(人員削減の必要性・解雇回避努力・人選の合理性・手続きの相当性)は、業績が黒字であっても問われます。つまり、黒字リストラは「やってよい」ではなく「やり方を誤れば無効になる」高リスクな手段です。早期退職制度の設計から希望者への条件提示、退職勧奨の進め方まで、法的な誤りのないプロセスが会社を守ります。

人事担当者への示唆

「うちは関係ない」と思っていたら危険です。会社全体としての業績が良くても、事業構成の見直しや職種転換が求められるAI活用当たり前時代、「いざとなれば人を出す」ではなく、日頃からリスキリング・配置転換・社内公募制度を整備しておくことが、黒字リストラに頼らない組織づくりの第一歩だと考えます。研修テーマとしては「キャリア自律」や「社内異動・兼業制度の活用」などを取り上げることが効果的ではないか、と考えます。我々社労士業界も、特に新人がやる業務はAIに置き換えることができる部分も多く、人を増やさなくても業績を拡大できる可能性を非常に感じているところです。

最後に

今回ご紹介した3つのキーワード——「黒字リストラ」「ガラスの崖」「シャドウワーク」は、一見バラバラのテーマに見えますが、根底には共通するメッセージがあります。それは、「見えにくいリスクや不公平を放置すると、やがて組織の信頼と持続性が損なわれる」ということです。

黒字リストラは、好業績という「見えやすい数字」の陰に潜む、AI時代を迎えた新たなキャリアパスの構築という問題です。

ガラスの崖は、「女性活躍推進」という前向きなスローガンの裏に隠れた、エース級人材の育成不足や責任転嫁という問題です。

シャドウワークは、タイムカードや業務リストには現れない「見えない労働」の蓄積が、個人と組織の両方を静かに疲弊させる問題です。

いずれも、「誰が、どんな文脈で、どんな負担を負っているか」を継続的に把握し、対話できる組織づくりが求められていると思います。これからの人事・労務管理は、「問題が起きてから対応する」後手の姿勢では不十分で、定期的な組織サーベイ、1on1面談の仕組み化、研修テーマの定期的な見直しを通じて、「今、組織で何が起きているか」を常に把握できる体制を整えることや、「今後、組織で何が起ころうとしているのか」を先手先読みできる人事が求められるのではないかと思います。

人事担当者・研修担当者の皆さんには、これらのキーワードを「最新の話題」として知っておくだけでなく、自社の制度・慣行・研修内容を見直す実践的なきっかけとして活用していただければ幸いです。「うちには関係ない」という思い込みこそが、最も危険な盲点になります。

発想のないところには次のアクションは出てきません。そういう意味では、これまで見聞きしなかったものにも接してみる、情報の食わず嫌いをせずに一度食べてみる、という体験を人事担当者や経営幹部が率先している企業が生き残っていくのだろうな、と思いますので、弊社も私個人もどんどん新しいものに触れていくことをここに誓います。

参考:はたらくソーシャル・リスニング(25年度下半期)(2026年5月11日)|パーソル総合研究所

https://rc.persol-group.co.jp/news/release-20260511-1500-1/

下村 勝光(しもむら かつみつ)
MIRACREATION株式会社 取締役。社会保険労務士法人MIRACREATION 代表社員。
仕事を通じて「笑いと驚き」を提供したい!をコンセプトに、北浜にある大阪証券取引所ビル8Fを本拠地としつつ、日々テレワーク中。
「難しいことをおもしろくして」をモットーに、現場に即した具体的なアドバイスを受けられると経営者から人気を博しております。
生まれは茨城県、育ちは大阪。趣味はフルマラソンで何とか3時間28分台を目指しております。

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