年末年始のスキマバイトで企業が注意すべきこと|受け入れ側・送り出し側の労務ポイント 最終更新日 2026.11.6 公開日 2026.11.6 人事・総務向け 失敗しない 研修担当者向け 計画・準備 こんにちは!今年も残りわずかとなりました。3月にWBCベースボール、6月にワールドカップサッカーが開催されていたことが1年以上前の出来事のように感じ、1年経つのは早いと言われますがやはり長いかも、と思う次第です。さて、12月から年明けにかけては、飲食・小売・物流・イベントなど多くの業界で人手が足りなくなる時期です。「短期間だけ人を増やしたい」というニーズから、スキマバイトや副業人材の受け入れを検討・実施される会社も多いのではないでしょうか。一方で、自社の社員から「年末年始の休みに副業をしたい」という相談もあるでしょう。 今回は、繁忙期の「受け入れる側」と「送り出す側」の両面から、よくあるポイントを整理します。 目次 データで見る「スキマバイト」活用の実態 【受け入れる側】押さえておきたい6つのポイント 1.雇用主は「自社」であることを忘れない 2.1日だけでも「雇入れ時の安全衛生教育」は必要 3.「直前キャンセル」「早上がり」は休業手当に注意 4.他社でも働いている人の「労働時間の通算」 5.同じ人を繰り返し雇うなら「保険」と「有給」も確認 6.ハラスメント防止と適切な就業環境の確保 【送り出す側】社員から「年末年始に副業したい」と相談されたら 1.まずは就業規則を確認 2.休日の副業は「休めていない」リスクも 3.同業他社でのスキマバイトにも目配りを 4.年末調整との関係 繁忙期前の「受け入れ準備」こそ、人事の腕の見せどころ 最後に データで見る「スキマバイト」活用の実態 東京商工リサーチが2026年10月1日〜8日に実施した企業向けアンケート(有効回答5,334社)によると、スキマバイトを「活用している」企業は4.6%でした。活用理由のトップは「繁忙に合わせてフレキシブルな雇用が可能なため」で72.9%。まさに年末年始のような繁忙期の人員確保に使われていることがわかります。 一方で、気になる数字もあります。 ●雇い入れ時の安全衛生教育を「実施していない」企業:49.2%(中小企業に限ると実施率は48.9%で、大企業の73.3%を24.4ポイント下回る) ●スポットワーカーとの直接雇用に伴う雇用保険・社会保険・有給休暇の扱いを「知らない」企業:25.7% 「アプリで手軽に人が来てくれる」という便利さの裏で、雇用主としての義務が見落とされている実態がうかがえます。 【受け入れる側】押さえておきたい6つのポイント 1.雇用主は「自社」であることを忘れない スキマバイトは、仲介アプリの会社ではなく、受け入れる会社とワーカーとの直接雇用です。つまり、労働条件の明示、賃金の支払い、安全配慮義務など、通常のアルバイトと同じ責任を自社が負います。現場の責任者が「アプリの人だから」と考えてしまうことが、トラブルの出発点になりがちです。 2.1日だけでも「雇入れ時の安全衛生教育」は必要 労働安全衛生法の雇入れ時教育は、雇用期間の長短に関係なく対象になります。年末の倉庫作業や厨房での作業は、慣れない人ほどケガのリスクが高まります。作業手順、危険箇所、緊急時の連絡先などを、短時間でも確実に伝えられるよう、1枚もののチェックシートや動画を用意しておくと効果的だと思います。 3.「直前キャンセル」「早上がり」は休業手当に注意 厚生労働省からは、先着順の求人の場合、応募した時点で労働契約が成立すると一般的に考えられる、と示されています。契約成立後に会社の都合で仕事をなくしたり早上がりさせたりすれば、労働基準法の休業手当(平均賃金の60%以上)の支払いが必要になる場合があります。「思ったより暇だったから早めに帰ってもらった」は、繁忙期の読み違いで起こりやすいケースです。 4.他社でも働いている人の「労働時間の通算」 副業として働きに来る人の場合、労働基準法により、本業の会社の労働時間と通算されます。原則として、後から労働契約を結んだ会社の側で法定労働時間を超えた部分に割増賃金の支払い義務が生じます。また、時間外・休日労働の「単月100時間未満・複数月平均80時間以内」の上限も通算で判断されます。受け入れの際は、本業の有無と労働時間を自己申告で確認する仕組みを作っておきましょう。ただし、実務上手間暇がかかりすぎるこのルールは来年2027年以降、改正予定です。 5.同じ人を繰り返し雇うなら「保険」と「有給」も確認 雇用保険は、31日以上の雇用見込みがあり、週20時間以上働く場合に加入対象となります(2028年10月からは週10時間以上に拡大予定)。社会保険も、2か月以内の短期契約であっても、更新される見込みがあれば当初から加入対象となり得ます。さらに、繰り返しの雇用が実態として「継続勤務」と判断されれば、年次有給休暇の付与対象となることもあります。「単発だから関係ない」と決めつけず、ワーカーごとの勤務実績を記録しておくことが大切です。 また、勤務中や通勤途中のケガは、受け入れた会社の労災保険で対応します。2020年9月からは、複数の会社で働く人について、各社の賃金を合算して給付額を算定する仕組みや、複数の職場での負荷を総合して労災認定を判断する仕組みが導入されています。本業の職場から直接向かう途中の事故も通勤災害の対象となり得ます。万一の際の報告ルートを、仲介アプリ任せにせず社内で決めておきましょう。 6.ハラスメント防止と適切な就業環境の確保 職場におけるパワーハラスメントやセクシャルハラスメントの防止措置は、スキマバイトに対しても義務付けられています。短時間の勤務であっても、指揮命令者が適切な言葉遣いや態度で接するよう、社内への周知徹底が必要です。 【送り出す側】社員から「年末年始に副業したい」と相談されたら 1.まずは就業規則を確認 厚生労働省のモデル就業規則では、副業・兼業は原則として認め、届出制とする考え方が示されています。制限できるのは、労務提供上の支障がある場合、企業秘密が漏れるおそれがある場合、会社の名誉や信用を損なう場合、競業により会社の利益を害する場合などです。自社の規程が「一律禁止」のままになっていないか、この機会に見直してみてください。 2.休日の副業は「休めていない」リスクも 年末年始の休日をすべて副業に充てると、年明けの業務に疲れが残ることがあります。健康状態に配慮する観点から、届出の際に副業先での勤務予定を確認しておくと安心です。 3.同業他社でのスキマバイトにも目配りを アプリで手軽に働けるようになったことで、社員が同業他社や取引先で働くケースも考えられます。顧客情報やノウハウの持ち出し、取引先との関係悪化につながらないよう、届出の際に勤務先の業種を確認し、秘密保持の義務を改めて伝えておきましょう。 4.年末調整との関係 年末調整は、主たる給与を支払う会社で行うものです。副業先の給与は年末調整の対象外となり、社員本人の確定申告が必要になる場合がある旨、しっかりとお伝えしておきましょう。 繁忙期前の「受け入れ準備」こそ、人事の腕の見せどころ 短期の人材は、来たその日から戦力になってもらう必要があります。だからこそ、受け入れ前の準備が成否を分けます。おすすめは、繁忙期の前に現場責任者を集めて、受け入れルール(労働条件の明示、安全衛生教育、キャンセル時の対応、労働時間の確認方法)を共有する短時間の勉強会を開くことです。日常のオフィスを離れた会議室で集中して行えば、現場ごとにバラバラだった運用をそろえる良い機会になると思います。 最後に 「手軽に人を確保できる」ことと「雇用主としての義務を果たす」ことは、本来セットです。年末年始の繁忙期を、働く人にとっても会社にとっても「また一緒に働きたい」と思える時間にするために、今のうちに準備を整えておきましょう。最近の人手不足、採用難時代においてはスキマバイトをあえて活用し、その人がうちの会社にマッチするようなら本採用の打診をし、正式なメンバーにするケースも出てきています。採用活動のレパートリーを増やすためにもまだ受け入れたことがない場合はチャレンジしてみてもいいかと思います。 出典:「スキマバイト」 活用企業の49%が「安全衛生教育を未実施」(2026年10月23日)|東京商工リサーチ TSRデータインサイト https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1203365_1527.html 下村 勝光(しもむら かつみつ) MIRACREATION株式会社 取締役。社会保険労務士法人MIRACREATION 代表社員。 仕事を通じて「笑いと驚き」を提供したい!をコンセプトに、北浜にある大阪証券取引所ビル8Fを本拠地としつつ、日々テレワーク中。 「難しいことをおもしろくして」をモットーに、現場に即した具体的なアドバイスを受けられると経営者から人気を博しております。 生まれは茨城県、育ちは大阪。趣味はフルマラソンで何とか3時間28分台を目指しております。 関連記事 >マンネリ化した忘年会を「研修×パーティ」に変える ~新しい社内イベントの仕掛け方~ >入社辞退や早期離職を食い止める!?10月の今考えたい、入社前の内定者フォローの重要性と具体的施策 >ハラスメントの労災実態とは?人事担当者が知るべき対策と研修のポイント CO-MITでは、様々な目的から全国で研修・合宿施設の検索が行えます。 >研修合宿施設検索サイト「CO-MIT(コミット)」で施設検索する! また、ご希望の研修合宿を一括手配する「専門家に相談」サービスもご用意しております。 ホテルや研修センターをはじめ、全国のさまざまな施設と緊密に連携。研修や合宿の目的・日時・参加人数などを踏まえ、プロの視点から最適な施設および備品等の選定・提案・手配を進めます。 ぜひお気軽にご利用ください。 > 専門家に相談する! 記事一覧へ
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